前日の昼に前売り券購入。2階指定席B、4000円。今回約半年ぶりの全日本観戦となるわけだが、矢張り川田のトークショーや橋本の参戦、グラジエーターの初の三冠挑戦等が主な見所であろう。だが、前日難波のチケット売場を一瞥してみると、売れ行きがもう一つ芳しくない印象であった。それだけに、今回の客の入りが気に掛かる。
午後2時40分過ぎに会場入り。雛壇は割と埋まっていたが、矢張り2階席の入りは鈍い。1月13日、成人の日。世間では成人式という点を差し引いても、それでも矢張り鈍い。
それでも、私は私なりに、今日のプロレス観戦を愉しもうと、いつもの様に座席に着く。いざ、観戦記へ………。
(第1試合)渕正信&宮本和志 対 愚乱・浪花 & 石狩太一 @ 30分1本勝負
所謂、石狩太一の"教育マッチ"的色彩の濃いカード。石狩は渕に腕ひしぎを決めに行くも、渕はこれをなんと持ち上げて返そうとする。場内は大歓声。しかしながら、これは果たせず逆に押し潰され、場内から思わず笑いが起こった。
一方でこのカード、個人的には宮本が前回の観戦からどれだけ成長が観られるのかという点も重要なのだが、如何せん成長が窺えない戦い振りに聊かがっかりした。途中トップロープから飛び技も仕掛けたが、これが空振り。場内から失笑が漏れる。私の後方で、
「宮本は躯を活かし切れていない」
という言葉が聞こえたが、その通りなのかも。頑張りは認める点ではあるが。
石狩の動きはシャープ。ドロップキックも切れが良く、今後の成長を窺わせるには十分。今回初めて石狩を生で観ることが出来たが、なかなかに期待の持てるレスラーといえよう。後は躯が大きくなってくれれば。
浪花は浪花で、自分自身の持ち味は出していたように思える。途中「サミング行け!」という観客の野次には苦笑いしたが、きっちり今回も、カニ歩きは愉しませて貰った。
最後は宮本が石狩をジャーマンでフォール。試合後は石狩が四方の観客に向けて丁寧に頭を下げていた。清々しい光景である。宮本はもう好い加減そろそろ踏ん張らなければ。後輩の成長で、尻に火が点いている状況と言っていいのかもしれないのだから。
(第2試合)カズ・ハヤシ&ジミー・ヤン 対 スーパードラゴン&フエゴ
@ 30分1本勝負
今日個人的にベストバウトだと感じた試合。フエゴには期待を掛けていたが、まさしく期待に違わない素晴らしいファイトを見せてくれた。
初っぱなからスーパードラゴンともども奇襲のトペ。此処からスピーディな両チームの攻防。流石にジュニア同士の戦いはこういうところに醍醐味を感じる。
ヤンドラの動きの良さは相変わらずだが、それ以上に今回はフエゴの動きに観客は舌を巻いていた様子。ラナを始めとして一つ一つの動きが実に切れが素晴らしく、その度に観客から大声援。逆に個人的に今回の観戦、スーパードラゴンがもう一つしっくりと来なかった。まぁ、この辺は個人的主観なので、反論があるかもしれないが。
最後でこそヤンドラに沈められたフエゴだが、今回のこの戦い振りで、彼の名前を存分に知らしめることは出来たのではなかろうか。実に今後の戦い振りが愉しみになってくる逸材といえよう。ヤンドラがフエゴの健闘を讃えて彼の手を高く掲げていたのは、それを如実に表している様に思える。
(第3試合)アブドーラ・ザ・ブッチャー&平井伸和
対 本間朋晃&土方隆司 @ 30分1本勝負
良くも悪くもブッチャーに始まりブッチャーに終わった試合。観衆の声援も、矢張りどうしてもブッチャーが1番になってしまうのは致し方ないにしても、他の3人の戦い振りから、自分がブッチャー以上に目立っていこうという気概が見えてこないのには落胆。
一番盛り上がったのが、場外でのブッチャーと本間との乱闘。この時ばかりは少しばかりBJWを意識してしまったが(苦笑)。前回の観戦では本間に割と良い評価を与えたが、今回は、どうにもこの時以外の印象が薄い。平井も土方も、ファイト振りから活気がこっちに伝わってこない。平井がラリアートを放つも、その当たりの弱さに呆れてしまった。
最後はブッチャーが毒針で土方をピン。試合後お決まりのように、「ブッチャー! バーバ!」を連呼していたが、それももう聞き飽きてしまった。
ノアや新日本といった他団体で中堅の低迷が口喧しく言われているが、全日本でも決して例外ではないことを思わせる一戦だったといえるのではなかろうか。
休憩前に、川田利明のトークショー。場内からは、
「川田ー! 待ってるぞーっ!!」
という大声援も。彼の声が小さい故、詳細は別の所に委ねるが、今回のこのトークショーでの川田のコメントの要点を記しておく。
「4月復帰を目処に、現在トレーニングを頑張っています」
「全日本は消えない、と思っています」
「復帰の際は、今まで以上の姿になって戻って参りますので、期待していてください!」
「自分としては、小島選手との対戦を希望しています」
「(ボブ・サップとは)全日本のリングで交えたいという気持はあります」(インタビュアーがボブ・サップについて質問しての回答。三冠を懸けるか?という質問に対しては川田はノーコメント)
「3月28日に本(オレたちの王道)を出版します」
レスラーの書籍出版は多いが、川田も漸くこの仲間入り。早くも内容が気になるが。
インタビューの最後に、川田、
「久々にリングの感触を味わう中で、自分が此処にいなければならないということを実感しています。必ず戻ってきます!」
と締めると、場内から大きな川田コール。ファンが如何に川田のファイトを渇望しているかを窺わせた。
(第4試合)ジョニー・スミス&ジョージ・ハインズ&保坂秀樹
対 スティーヴ・ウィリアムス&マイク・ロトンド&奥村茂雄 @ 30分1本勝負
最近のファイトの酷評振りが凄まじいウィリアムス。試合開始早々、観客を盛り上げようとウィリアムスは手を叩くのだが、どうしても乗り切れなかった。そして、矢張り今回も、彼の動きの悪さが目に付いた。逆にこの試合で一番良い動きを見せていたのは、ジョージ・ハインズである。後、観客のコールが一番高かったのは、ジョニー・スミス。この辺り、矢張りウィリアムスの人気の低落を象徴しているようでならない。
試合中に頻繁にTOPポーズを見せるウィリアムス。矢張り盛り上がらない。トップロープに上った保坂を投げ落とすのだが、如何せん動きが悪いからか、落とし方が危なっかしい。
動きの悪さからブーイングが起きると、流石に苦笑いするよりなかった。
観衆のコールは大きかったが、今回ちょっとスミスがもう一つ目立ってないような印象。序盤の奥村との攻防は流石にスミスらしさを覗かせるが、結局それくらいしかファイト振りを想い出せない。また、ロトンドもエアプレーン・スピンこそ出したものの、矢張り目立たず。地味ながら堅実なファイトを見せるのが彼等の良いところでもあるのだが………。矢張りこれだけでは足りないのかなという気持にもさせられた。
最後はウィリアムスが保坂をバックドロップに仕留めるものの、これも落とし方が全然デンジャラスでない、普通かそれ以下のバックドロップ。試合後にまたしてもTOPポーズを遣ったのだが、矢張り盛り上がっていなかった。それでいてしつこく遣るものだから、呆れて物が言えない。
それでも矢張り、言っておきたい。「もう、TOPポーズは要らない」と。
(第5試合・特別試合)天龍源一郎&200%マシン
対 嵐&荒谷信孝 @ 60分1本勝負
特別試合と銘打たれているものの、全然そういう感じのしないカードの組み合わせ。60分1本勝負とあるが、個人的に30分1本勝負が相応だと感じた。
200%マシン登場の刹那、場内から大安生コール(笑)。試合ではトペも披露し、一部の観客を驚かせた様子(別に私は何とも思わなかったが)。だが、今回彼は余り目立っていなかった。カード的にも天龍がどうしても目立ってしまうのは致し方ないとしても。第3試合のブッチャー同様に。
嵐にしても荒谷にしても、どうにも動きが悪い。特に荒谷なんかは以前から数多くの期待が掛けられているというのに、依然として低落傾向。今回も天龍と荒谷の絡みは何度かあったものの、荒谷が押される傾向は変わっていない。
一人元気な天龍。グーパンチと天龍チョップを繰り出す度に、その威力に舌を巻く観客。どうにかそれに抗わなくてはならないのだが。最後は結局天龍が荒谷に垂直落下のブレーンバスターを浴びせてフィニッシュ。
毎度のこと正念場と言われ続けている荒谷だが、流石にもうそろそろ我慢の限界である。いつまで経っても"天龍が荒谷を扱いている"様な試合を続けていては、駄目なことくらい荒谷も解っているとは思いたいが………。
これだけの素材を、埋めさせるわけにはいかないから。
(第6試合・特別試合)小島聡&ケンドー・カシン
対 橋本真也&小笠原和彦 @ 60分1本勝負
ZERO-ONEからの因縁を引き摺るカシンと小笠原。そして橋本真也の参戦と、話題的にも十分なカード。全日本でベルト奪取など実績を残している小島の意地にも期待したいが。
入場は小笠原→カシン→橋本→小島の順。その中でも矢張り橋本の登場時の声援の大きさに、改めて存在感の大きさを知らしめることとなった。
ゴング前からカシンと小笠原は臨戦態勢。試合が始まると、小笠原が積極的にカシンに攻めていく。小笠原の蹴りを今回初めて生で観ることが出来たが、矢張りシャープだと実感。
暫くして、橋本と小島の攻防。小島としては全日本を少なからず牽引してきたという自負があることだろうし、それを見せたい筈なのだが。
小島が橋本の上になって張り手。これに逆上した橋本が小島に鋭い爆殺シューター! その一方では、場外でZERO-ONE勢のセコンドと全日本勢のセコンドとが遣り合う場面も。それにしても、場外で動き廻る赤いズボンを穿いた謎のコートの男が気になって仕方なかった。
カシンは小笠原にスリーパー。そして小島が小笠原にバックドロップ一閃! そしてカシンが捉えているときに小島がラリアートを噛ませるが、これがなんと誤爆。しかしこれは単なる橋本への揺さぶりにしか過ぎず、ここから小島とカシンは、橋本にツープラトンのブレーンバスター!
そして、小島、
「いっちゃうぞ、バカヤロー!」
の観客の声と共にダイビングエルボーを決めるが、カウント2。そしてなんとカシンが橋本にスリーパーを決めるが、これも決まらず。
最後には橋本が小島に強烈な垂直落下ブレーンバスターを浴びせ、そしてカシンにジャンピングDDTを浴びせて試合終了。
試合全体を通した印象だが、小島が果たして全日本を引っ張ってきた意地を見せたのかと言えば、残念ながら答えはノーだろう。ファンとしては、外敵のZERO-ONE勢に快勝してこそだった筈なのだが、橋本の攻撃に散々苦しめられ、最後には強烈な垂直落下ブレーンバスターを浴びせられたということを鑑みると、到底意地を見せられたとは言えないだろう。その辺で不満の残る内容であったのは、残念であった。
試合終了後、橋本のマイク。
「武藤敬司! 武藤敬司ーっ!! おい、お前を潰す為に来たんだ、コラ! 徹底的にやるぞ!
憶えとけ、コラ!」
今後、果たして武藤と橋本の邂逅はあるのだろうか。橋本にしてみれば、親友の武藤が苦しんでいる状況を見ていて、手を差し伸べたい気持は少なからずあるだろうが。
(第7試合・三冠ヘビー級選手権)王者=グレート・ムタ
対 挑戦者=ザ・グラジエーター @ 60分1本勝負
武藤は今回ムタとしての初防衛戦。一方でグラジエーターにとって観れば初の三冠戦だけに、緊張は少なからずあるだろう。前哨戦でグラジは武藤に勝っているだけに、前煽りは十分に果たしてるのだが、本番はどうか。そして橋本のコールに武藤はどう答えるのか。
さて、試合開始。矢張り最初はじっくりとした立ち上がり。グラジがラリアートで武藤をリング外にすっ飛ばすと、ムタは様子を窺っているのか、リングの周りをひたすらうろうろ。序盤はグラジが、押していた感じ。
その後、ムタが低空ドロップキックからドラゴンスクリューをグラジに見舞うと、途端にグラジの動きが鈍る。そして場外に逃れたグラジに向かって、ムタがトペ敢行、そしてエプロンからのシャイニングウィザード!
場外でのムタの攻撃で、グラジは流血した様子。
矢張り足に攻撃を集中されたからなのか、それとも知らず知らずのうちの三冠戦の重圧なのか。グラジの動きが鈍い。そのグラジに向かってムタ、フラッシングエルボーからSTFへ!
それに、蝶野へのメッセージ的要素が込められているかどうかは兎も角として、かなりこれはグラジには堪えている筈。苦しみの声が、こちらの方まで伝わってくる。それでもなんとかこれを凌いでロープブレイク。
グラジのダメージが大きいのか。矢張り動きが鈍い。そこにムタがグラジに噛み付き、そしてスペース・ローリング・エルボー! 更にシャイニング・ウィザードを噛ませるが、グラジは怺え、逆にラリアートを浴びせる!
そしてジャーマンをムタに仕掛けるがこれはムタも返す。
グラジが今度はムタに向けてトペ・スイシーダ敢行! これには観客も流石に歓声が沸いたが、どうも私自身、この試合にどうにものめり込めなかった。個人的感想だが、試合中、何度も両者が休んでいるような感じがして、だらだらした進行に思えてならなかった。その所為かもしれないが。
グラジエーターがムタにパワーボム! 更に投げ捨てパワーボムまでグラジは繰り出したが、ムタは2カウントでしぶとく返す。
更にトップロープからグラジがムタに雪崩式パワーボムを繰り出そうとするが、此処で遂にムタの毒霧炸裂!
かなりこれで両者は危険な落方をしてしまう。両者が強烈なダメージを受けているのは解るが、かなりダラーとした展開。観客も何処か疲れていたのだろうか。
グラジがムタにラリアートを決めた後、コーナーに上るのだが、そこにムタが再度シャイニング・ウィザード! 更にもう1発仕掛けるも、グラジは2カウントで返す!
最後に漸くムタがムーンサルト・プレスを決めて、カウント3。ムタの初防衛達成の刹那であった。
グラジ自身も頑張っていたとは思うが、矢張りこの日のメインはどうも興奮できなかった。
体調の悪さの所為にしたくはないが、どうしても攻防よりも休んでいるシーンが目に付いてしまったから。前回観た天龍と小島の三冠戦が好勝負だっただけに、余計にこの日のメインが詰まらなく映ってしまったのかもしれないのだが。
全試合終了後、またしても橋本が登場! 開口一番、
「武藤ーっ!! 闘るのか闘らないのか、どっちだ! コラ!」
そしてZERO-ONE勢がムタに向けて突っかけ、それに応戦した全日本勢との間で乱闘が勃発! しかし、全試合終了後、しかもだらだらした終わり方の後にこれをやっても盛り上がらず、白けた雰囲気が会場を埋めていた。仕舞いに観客からは、
「橋本帰れーーっ!!」
という野次まで飛ぶ有様。なんだか後味の悪い結末を観たようで、残念でならない。その後も橋本は、
「ZERO-ONEが、正式に全日本に喧嘩売るぞ!」
と発言し、開戦をアピールする。それに呼応した小島も、
「橋本! 全日本は武藤一人だと思ってんのか、コラ! 愉しみに待っとけ!」
と返すのだが、場内から野次は止まなかった。特に小島に関しては、前の試合でぴりっとしなかっただけに、余計にこのコメントは私には虚しく聞こえてしまった。
総括として、石狩やフエゴといったニューフェイスが登場する反面、荒谷などの中堅の不振は矢張り深刻。又この日のファイトが、全日本の外国人勢のリストラに拍車を掛けるのではないかという懸念もあった。
帰り際、前回の観戦では「面白かった!」という声があったのだが、今回に関してはそういう声が残念ながら聞こえてこなかった。それだけに、今後の大阪での全日本の興行が、心配に思えてならない。本当に、今こそ正念場なのだが。
そういう虚しさを振り払おうと、缶コーヒーを煽りながら家路につく金山であった。(観戦記終わり)
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