2002.7.17 全日本 サマーアクションシリーズ
大阪府立体育会館大会観戦記

投稿者:金山政史さん

観衆:5850人


連日茹だる様な暑さが続く天下の台所、大阪。だが、今日は幾らか気温が下がっているせいか、未だましと言える暑さであった。熱帯夜続きで睡眠不足の私は、仕事をいつもより早めに切り上げ、自転車漕ぎ漕ぎ大阪府立体育会館に足を運んだ。この蒸し暑い中、上町台地を自転車で駆け上がるというのは、自殺行為とも言えるが、それでも観たいという気持が強いので気にも留めていない。観られれば疲れなんぞ吹っ飛んでしまうだろうから。

元々プロレスや格闘技といったものに対して関心の強い人間だが、都合上滅多にプロレス会場に足を運べない。だが今回ばかりは大きなカードが目白押しという状況もあり、なんとしても観たいという気持をもってチケットを手に入れたのである。普段プロレスの大きなタイトルマッチは東京で開催されるのが常だが、今回は大阪で、しかも3つのタイトルマッチが1日で行われるというのだから、これは是非とも観なければという気持が強かったのである。午後5時30分、2階指定席B、4000円のチケットを握り締め、会場に入る。

会場に入ると、早速グッズ販売に人だかりが出来ていた。混んでいてよく解らなかったが、武藤敬司の団扇やWARのTシャツが売られていた様子である。その横でプログラムが1つ1000円で売られていた。観客を見ると、「閃光魔術」と筆書きしたTシャツを着た親子連れや、若いカップルの姿を目にする。その他にもちらほらと、若い女性客の姿を見掛ける。恐らく武藤敬司や小島聡といった面子をお目当てに観戦しに来たのであろう。しかしそんな姿を後目に、そそくさと私は着席した。

オレンジに黒のツートンカラーの小島聡の垂れ幕と、黄色と黒のツートンカラーの天龍源一郎の垂れ幕を見るにつけ、改めてこの試合が重要な意味合いを持つ事が伺い知れる。垂れ幕の数で言えば天龍の方が1枚多かった事を付け加えておく。

試合前に場内が暗転し、試合プログラムが発表される。カードを読み上げる度に歓声と拍手が巻き起るが、矢張りメイン三冠戦の時の歓声が一番多く感じた。様々な雑感を抱きつつ、観戦記へ………、

(第1試合)渕正信&宮本和志 対 奥村茂雄&保坂秀樹 @ 30分1本勝負

宮本はともかく、このカードに、改めて奥村と保坂の置かれている現状が見え隠れしている。分裂直後から全日本に積極的に参戦し、そして正式入団を果たした奥村。この日第6試合に登場する本間と同時期に全日本に正式入団した保坂。だが現実は、全日本の現在の戦いから1歩も2歩も置かれた彼らに重くのし掛かっている。この試合で何らかの結果が出せない事には、今後も前座でお茶を濁していく事は避けられないだけに、此処は奮起が望まれるのだが………。

先発は渕と奥村。第1試合らしく、ど派手な攻防は無く実に落ち着いた試合展開。場内から

「ゴッチイズムー!」

という声が上がった時、思わず心の底でくすくす笑いを浮かべている自分の姿に気付いた。暫くして宮本にタッチした刹那、観客から歓声が巻き起る。その歓声に応えるべく、宮本は先輩格レスラーの奥村や保坂に向かっていくが、矢張り経験の差は否めない。暫くして宮本をコーナーポストに捉えた保坂が渕に向かって挑発! すると渕、保坂の背中を捉えバックドロップ一閃! ここからツープラトンのブレーンバスターを決めた後、保坂を渕が丸め込んでいく。その度に保坂は懸命に返していくが、最後は結局宮本が場外で奥村をホールドしてナイスフォロー。渕が見事に保坂を丸め込んで決着。試合終了後は双方のチームとも気持ち良くオフサイドの握手。納得のいく第1試合であった。

(第2試合)ジョニー・スミス&土方隆司&愚乱・浪花 対 ジョージ・ハインズ&カズ・ハヤシ&ジミー・ヤン @ 30分1本勝負

私が兼ねてから御贔屓にしているレスラー、スミス登場。土方、浪花と組んでのタッグで、ジョージとヤンドラのタッグと激突。土方、浪花の両名とも全日本に継続参戦してはいるものの、未だ正式入団の切符は掴んでいない。他方、絶大な会場人気を誇るジョージ。これにヤンドラ2人が混じっての6人タッグマッチ。スミスとハインズの味有る攻防に加え、ジュニア勢同士のスピード感溢れる攻防が期待される筈だが。そして、"かに道楽"の本場で浪花のカニ歩きは見られるのか。

試合前にスミス、土方、浪花の3選手によるカラーボール投げ入れ。そのボールを受け取った人は記念品が貰えるそうだが、2階席で観戦している私には何の関係も無かった。

それはさておき、ジョニー・スミスが登場した時には、様々な思いを巡らせていた。全日本に於ける処遇が余りにも悪いと感じている私は、彼に対して気の毒な感情を抱かずにはいられなかった。だからこそ、彼の名前がコールされると、拍手を送ったのである。

さて、試合はそのジョニーとジョージとで始まった。ジョージは武藤タイツではなく、元々のオリジナルである赤に黒線の入ったロングタイツで試合を行っている。流石はテクニックに優れる両者。執拗にジョージが腕を攻めていくと、満を持してジョニーが切り返し。この流れる攻防が起きると場内が拍手喝采。何処からか

「スミス〜!」

という男性の甲高い声が起ると思わず苦笑いした。

その後に土方とハヤシが登場、ハヤシの切れ味鋭いドロップキックが決まると感嘆の声があちこちから漏れた。ジョニーとジョージが重厚感溢れるファイトで唸らせれば、残るジュニア勢はスピード感溢れる戦いで観衆の目を惹き付ける。

暫くすると、浪花とヤンの攻防に移行。この攻防が珍妙で愉しい。ヤンの腕を捉えた浪花が、

「待ってました!」とばかりのカニ歩き!

いやはや、これが観られるだけでも、この試合の価値は存分にあるが、この試合は特にカズ・ハヤシとジミー・ヤンのヤンドラ2人の動きの良さが特に目に付いた。土方もやられてばかりではなく、ジョージの延髄に鋭い蹴り! 場内も大いに沸く。

ジュニア同士の戦いは実にスピード感に溢れ、観客の目が右往左往してしまう程であったが、最後は結局浪花がヤンドラのダブルの攻撃に沈んだ。だが、試合内容は十分に満足できる内容であった。ただ、ジョニーがジョージとの攻防以外では目立たなかったのが気になる点ではあるが………。

(第3試合)嵐&荒谷信孝&平井伸和 対 スティーヴ・ウィリアムス&マイク・ロトンド&相島勇人 @ 30分1本勝負

WAR勢3人衆と、バーシティ+相島のタッグマッチ。三冠挑戦を仄めかしているウィリアムスがどういうアピールを行うか。だが天龍の目は既に、防衛後の対グレート・ムタへと向けられている。一方で伸び悩む荒谷と、全日本に再度継続参戦の道を歩み始めた相島の戦い振りも気に掛かる。荒谷は長門でのメインでも長井満也のキャプテュードに敗れており、此処で何とかしないと、本当にやばい。

この試合、結論から言っておくと、はっきり言って最悪の試合でした。前の第2試合の面白さがこの試合で吹っ飛んでしまったと言えば言い過ぎか。

試合は先ず、外人勢がゴング前にWAR勢に突っかかったが、直ぐに相島がWARの餌食にされてしまう。集中攻撃を喰らうが、何とか踏ん張り、ウィリアムスと平井の攻防に。途中でウィリアムスがコーナーに上ってTOPポーズをやるが、白けた雰囲気だけが残った。

その後平井から荒谷にスイッチ。ウィリアムスに月面水爆を仕掛けるも結局はかわされてしまう。最後は荒谷がウィリアムスのパンチを食らい、そのまま殺人岩石落としで3カウント。試合時間は後で確認すると僅か7分ほど。後には荒谷の不甲斐ない負け方と、ウィリアムスの情けない場外TOPポーズでの半周だけが、虚しく残っただけであった。ウィリアムスが場違いなマイクパフォーマンスをしなかった事だけが、唯一の救いか。そして荒谷、今後どうなっていくのか………。

午後7時15分から、暫くの休憩。自販機の苺ミルクを呷りながら、観戦概要を整理していく。いまいち整理出来ていないのではないかという懸念を抱きながら………。

(第4試合・世界ジュニアヘビー級選手権)王者=ケンドー・カシン 対 挑戦者=グラン浜田 @ 60分1本勝負

この試合前に、スタン・ハンセンPWF会長(未だこの呼び方がどうも馴染まない)が「SUNRISE」にのって登場。観衆から大歓声が沸き上がる。

このカードが全日本で実現する辺りに、改めて全日本は"変わった"んだなと実感。新日本では屡々絡んでいる2人。数多くの因縁を吹っ掛けた王者カシンが、挑戦者浜田相手にどういう試合をするのか。逆に浜田は50歳過ぎでの王座奪取を果たせるのか。既にリング外で2人の遣り取りが愉しく(?)繰り広げられており、お互い臨戦態勢にあり、と言ったところか。意外とこの試合は飛んで跳ねてのお決まりのジュニア戦には成らず、関節技主体の攻防、所謂新日本伝統のストロングスタイルでの戦いになる可能性が有る。

カシンの両手には2本のベルトが。その2つのベルトをハンセン会長に"返還"。だがハンセン会長は1本(勿論偽物)を何処かへ遣ってしまった。ハンセンにおちょくられた(?)カシン。憤り(?)の表情。

さて、試合開始。矢張り両者ともベーシックが新日本だからなのか。じっくりした攻防で始まる。暫くしてカシンが浜田に"握手"の素振り。これに応じた浜田、案の定"手痛いしっぺ返し"を喰らってしまう。だが、それを除けば序盤は実に落ち着いた攻防をしていた印象がある。

カシンはよっぽど渕正信の存在が目障りなのか、場外の渕に攻撃を仕掛ける。だが、矢張り老練の浜田。旨くカシンを攻めていく。コーナーポストにカシンを乗っけてフランケンへ………、と行こうとした刹那、カシンが切り返してコーナーポストとロープを利用しての腕ひしぎ! 場内からは、

「渕、外せ!」

のコール。だが、渕に気を取られたのか、これを返されてしまう。

その後浜田が懸命にカシンを攻めていくが、カシンが旨く切り返して再度の腕ひしぎへ。だが浜田もしぶとく堪える。逆に浜田がトップロープから雪崩式の浜ちゃんカッターを繰り出すが、カシンもまた堪える。

魅せてくれるぜ、この2人!

最後は結局浜田がカシンの雪崩式腕ひしぎにタップしたが、この試合、まさしく浜田の年齢に似合わぬ素晴らしいファイトが光った好試合であった。

試合終了後。ハンセン会長からベルトの授与。だが1本だけ。当然カシンは納得しない訳だが、最後は結局しぶしぶ「わかったよ!」的な受け取り方をした。認定証は………、そういや見なかったなぁ。

その後、何とジミー・ヤンが、

「ネクストチャレンジャー、ジミー・ヤン」

とやって、カシンに挑戦表明。そして、ヤンドラの2人がカシンに突っかかるとリングは騒がしくなる。最後にハヤシが浜田に

「〜〜〜とやるのは10年遅いんだよ!」

と挑発。負けずに浜田が、

「〜〜〜とやるのは20年(?)遅いんだよ!」

と遣り返していたが、この遣り取り、旨く聞き取れなかった。だが、妙に笑える。

(第5試合・30th Anniversary Special Match in Osaka)ミル・マスカラス&ドス・カラス 対 アブドーラ・ザ・ブッチャー&安生洋二 @ 30分1本勝負

30周年スペシャルマッチとして拵えられたこの試合。安生以外の3人は既に50歳を越えている往年のファンなら懐かしいであろうマスカラス・ブラザーズの編隊飛行。ブッチャーが此処で反則全開のラフファイトを見せられたら面白そうなのだが。でも、下手するとこのカード、ワーストバウトに成ってしまう懸念もある。だが、個人的に今日のワーストバウトは既に見終えている

ブッチャーと安生がお互いの入場テーマ曲を演奏途中に切り替えながら入場、………何だか不自然(笑)。一方のマスカラス・ブラザーズ。「SKY HIGH」が流れると一斉に大歓声! そして入場する彼ら。いと華やかなり。

さて、試合はというと、いきなりマスカラスとブッチャーが場外でやり合う。暫く膠着した状態。場外ではドスカラスコール、一方場内の安生コール。この2つが何とも珍妙。

矢張りブッチャーと安生ではタッグなんて成立し得ないのか(笑)。地獄突きが安生に"誤って(?)"炸裂。そして場外の安生目がけて、ドスのプランチャ! 50歳を過ぎていてこの動き、矢張りただ者ではない

その後、ブッチャー目がけてダブルのフライング・クロスチョップ。だが、ブッチャーはドスカラスにカウンターの地獄突きを炸裂させた後、毒針エルボー! マスカラスがカットに入って何とか凌ぐ。そのカットの入り方が、老人を労る様な感じで、妙に可笑しかった。

その後暫くして、コーナーにマスカラスが振られると、何と、

マスカラスのマスクが一瞬だが剥がれた!

のである。ごちゃごちゃした展開の中、ブッチャーのエルボーが"一応"味方の安生に炸裂。その後、ドスが場外のブッチャー目がけて何と、トペ・スイシーダ! 本当に50歳を越えているのかという見事な動きで相手を翻弄していく。

そしてリングに孤立の安生。最後はマスカラスのフライング・ボディアタックに轟沈。勝って嬉しいマスカラス・ブラザーズ。負けて悔しい凸凹コンビ。最後にこの凸凹は見事に仲間割れをしましたとさ。目出度し目出度し………(笑)。

(第6試合)長井満也&本間朋晃 対 マイク・バートン&ジム・スティール @ 30分1本勝負

本間には荷が重いカードだが、それだけ彼に対する期待が表れているのであろう。どれだけバートン&スティールに喰い下がれるか。この点に尽きる。

バートンとスティールがお揃いのロングタイツで入場。一方の長井は坊主頭にロングタイツの風貌にいつの間にか変わっていた。

先発は本間とスティール。だが、実力差は如何ともし難く、直ぐさま捕まってしまい、バートンには滞空時間の非常に長いブレーンバスターを浴びるなど、暫くは本間のローンバトルが続いた。

だが、其処は小島の濱口道場の後輩である本間。何とかこれを凌いで、長井にスイッチ。長井は膝を巧く使って外人勢を蹴散らす。本間も必死に喰い下がるが、最後は結局スティールのターボドロップ2に沈んでしまった。だが、動きそのものは決して悪くなく、今後の期待を抱かせるには十分の内容だった。それだけに、今日の荒谷の不甲斐なさが際立ってしまう。

(第7試合・世界タッグ選手権)王者組=武藤敬司&太陽ケア 対 挑戦者組=ブライアン・アダムス&ブライアン・クラーク(クロニック) @ 60分1本勝負

噂によるとこの試合を最後にコンビ解消と囁かれている王者組。対するアダムス&クラークのクロニックは元WCWタッグ王者の実力者だけに、易々と試合は出来ないであろう。此処はケアの奮起を期待したいが、もしこの試合でケアがあっさり負ける様な事にでもなると、ケアの商品価値にも影響が出かねないだけに………。

挑戦者組クロニックが入場してくる。だが、遠いので見分けがどうにも付き難い。対する王者組、武藤とケア。矢張り武藤、こういう大舞台になると存在が映えてくる。

絵になる男、武藤敬司。

だが、膝の具合は如何ともし難い。引退も囁かれる昨今。どういったファイトを繰り広げるのであろうか………。

先発はケア。だが、WCWでトップを張ったクロニックの圧倒的なパワーの前に、観ていて切歯扼腕させられるファイト。なんとか武藤にスイッチするも、その武藤を軽々と持ち上げるクロニックのパワー。前評判を大きく上廻る凄い奴らだ。

武藤もエルボーを駆使して何とか喰い下がろうとするが、パワーの差は歴然。逆にクロニックは挑戦者故の余裕からなのか、積極的に攻撃を仕掛けていく。

そんな中、ケアが飛びつきDDT、そして武藤が低空ドロップキック→ドラゴン・スクリュー→足4の字と攻め立てるが、カットに入られてしまう。武藤はミサイルキックで応戦するが、スペースローリングエルボーを受け止められた後、フルネルソン・スープレクス投げっ放し!

それでも、武藤は浴びせ蹴り、そして悪い膝に鞭打っての月面水爆! だが、これをかわされてしまった武藤。膝に大ダメージ。奥の手の閃光魔術も功を為さず、逆にクロニックの圧倒的なパワーを持ったツープラトン攻撃を受けてしまい、最後は武藤がフォールを取られる。武藤&ケア、落城の刹那であった。惨敗と言っていいのかも知れない。

この試合、今日観ていて2番目に悪い試合だった様に思う。兎に角ケアが全くと言っていいほど不甲斐なく、最後の方は武藤一人でクロニックに立ち向かったという印象を、ファンに与えてしまったのではないかという懸念が残ってしまった。言い換えれば、結局此処まで来れたのが、武藤敬司の御陰だったという印象を、より強く与えてしまったと言えるのではないか。

ケア、お前はこのままで良いのか?

それだけしか言える言葉が無い。

(第8試合・三冠ヘビー級選手権)王者=天龍源一郎 対 挑戦者=小島聡 @ 60分1本勝負

王者天龍に、ハンセン直伝のラリアットを新兵器に臨む小島。武藤の足4の字に膝を痛め付けられ、ギブアップ負けした後の天龍に、そのショックは全く見られない。その後の下関での試合では、お返しとばかりに武藤の背中に椅子攻撃を乱打。見かねた小島が乱入して天龍の膝にラリアート。御膳立ては整った。この試合に勝って防衛を果たせば、ムタ相手に3度目の防衛戦をすると豪語。そうはさせじとウィリアムスが何らかのアピールをするのか。注目。

さて、結論から言えば、実に見事な試合だったと言えよう。前の試合が悪いだけに、余計にこの三冠戦の好勝負が映えたのだが。

ハンセン直伝(?)のラリアートを武器に三冠奪取を窺う小島。その一方で天龍も意地がある。三冠王座の重みを人一倍知っているという自負が有るからだ。

両選手のコールが木原文人によって読み上げられると、リング上は2色のテープであっという間に埋め尽くされた。これぞ、まさしく三冠の光景。それが大阪で行われるから余計にその思いが強くなる。

試合開始。普段の三冠戦の様に、じっくりとした立ち上がり。赤コーナーに天龍を追い詰める小島。その一方で天龍もグーパンチや天龍チョップで遣り返す。

小島は天龍の右膝にストンピングを徹底的に仕掛けていく。ドラゴン・スクリューも繰り出す。だが、天龍にしても意地がある。徹底的に足への執拗な攻撃、グーパンチ、チョップの雨霰、ラリアート。次第に小島の動きが鈍る。場外に転落した小島を、天龍のトペが襲う! 蓄積されるダメージ。

それでも小島は蠍固めで天龍の膝を集中攻撃。そして


「いっちゃうぞ、バカヤロー!」

の大合唱と共にトップロープからのエルボー! だけども天龍はしぶとく2カウントで返す。

小島の執拗な攻撃を凌いだ天龍が、カウンターの天龍チョップ→延髄斬り→DDTの波状攻撃! だが、小島は何とか返す。

天龍の攻撃の手は止まらない。ジャーマン炸裂! でも小島は返す! そして、フルネルソン・スープレクス!!!! WARスペシャルから更にはスリーパーで徐々に小島の体力を奪っていく。

こんな事で負けてはいられない。小島だって意地が有る。執念で返して、コジコジカッター! だが、ダメージの蓄積は甚大。天龍はしぶとく返していく。

天龍がグーパンチ。そして垂直落下ブレーンバスター! 更にグーパンチを炸裂させて、ブレーンバスター連発! しかし小島はしぶとく返していく。凄い展開になってきた………。

そして、小島が天龍目掛けてラリアート!!!! だが、これを凌いだ天龍。グーパンチからブレーンバスターと、津波の如く小島を襲っていく。だが、小島はラリアートを強烈に決める。天龍は意地でも返していく。

そして、天龍のチョップと、小島の張り手が意地のぶつかり合いとなって観客を呑み込んでいく。タフ、兎に角タフ。

天龍はグーパンチをひたすら繰り出し、更にはスパイダー・ジャーマンまで使った。そしてダイビング・エルボー! だが、小島は意地でも返していく!

小島はラリアートを勝負所で惜しみなく使っていく。だが、天龍はしぶとい。兎に角、しぶとい。これでもかと、ブレーンバスターを繰り出し、最後はグーパンチから力強いパワーボム! ………カウント3。

天龍は勝った。だが、小島もしぶとかった。この戦い、まさに意地のぶつかり合いそのものという試合だった。こういう試合だったら、他の観客も満足のいった事であろう。

改めて結論。この日の興行。

良かった点としての、宮本の活きの良さ。ヤンドラの躍動感。老いて益々盛んな浜田の動き。カシンのやんちゃさ。マスカラス・ブラザーズの年齢にそぐわない戦い振り。クロニックの底知れぬパワー。そして天龍と小島の意地。

その一方での荒谷とケアの不甲斐なさ。

これが今日の観戦から得た私なりの実感である。全体的に非常に実りの多い興行だったのではないかという点を記して、観戦記の結びとしたい。