2004年3月14日 新日本プロレス
京都市体育館大会観戦記 |
観衆:4000人
「亘が見たい!」
相方がそう言ったのは、J-CUPの僅か三日後のことだったと思う。
付き合い出した当初と比べると、幾分プロレスの知識、理解は深まってきたのだが、自分からプロレスを見たいと言い出したのは初めてだったので、少々面食らう。しかも大会出場者中、もっとも華麗さとは縁が遠い選手である。なんでまたよりによって。
「だってかっこいいもん」
神よ、所詮選手の人気というのはルックスなのか。しかも井上の顔と言えば、端正なのは間違いないが、どことなく暑苦しい……10年前のイケメンである。しかも、挙動の全てに「俺、不器用っすから」が滲み出ている。とても女性受けするような選手では……と思ってはたと気づく。この女の好みはグラン浜田だったことに。ちょっとノンフィクション風に書き出すテスト。僕も新日本を生観戦するのは久しぶりだし、良い機会と言えばそうかも知れない。で、数年ぶりの京都市体育館です。田上がベイダーにあっけなく敗れ去る場面を目撃して以来。
交通の便ははっきり言って悪い。京都五条通国道9号線と言えば、ICの近くのせいか時間によって異常に渋滞します。駐車場少ないし。三時間前に着いたのに、駐車場見つけて会場入りしたのは開始三十分前でした……まあ、京都KBS以外ならここが一番でかいしなあ。パンフレット購入したらケロのサインつきでした。微妙極まりない。売店でオペラグラスとか売ってくれないものですかね。
第一試合開始直前ではアリーナ満席、スタンドは5割ほどか。関西でNOAHが惨敗してるのを見てると、羨ましくて涙が出てきます。客層は……むさ苦しい野郎ばかりかと思ってたら、意外に子供が多いですね。お水系の姉ちゃんはともかく、年配者も結構いる。パンフ見てみりゃ、カレーマン出るんだね、納得。1:田口・山本VS後藤・安沢
伝統の第一試合……しかしいきなりピンチ。四人ともヤングライオン伝統スタイルのため、誰が誰やらさっぱりわからない! とりあえず、スキンヘッドの山本は分かった。後は……今攻撃受けてるの、誰だっけ?
テレビで見てりゃ、分かるんですけどね。不思議なもんです。動きは全員ほとんど一緒だから、とりあえず意地の張り合いを楽しむことに。禿の山本と後藤(多分)の絡みが面白かったかな。その二人が場外で乱闘してる間に、片方が片方を逆エビにとって終了……なるほど、勝った方が田口ね……殴る蹴るとグラウンドしか許されないにしては、頑張った方かな。評価:3
2:井上・矢野VS真壁・長尾いきなり今日のお目当ての一戦。しかしこの四人にまざると、亘君小さすぎ。しかもあまり目立ってねえ! ま、今日の先輩組は、後輩二人を目立たせる立場に徹していたから仕方ないか。大阪で大恥かいてからようやく再デビューした長尾に注目か。
で、その長尾を井上組が集中攻撃。身体が細い、受けが弱い、当たりがしょぼい……なんとか真壁に繋ごうとするも、その度に井上の老獪なインサイドワークに阻まれる……ってそういえばもう亘も三十路なんだよなあ。
ピンチの度に真壁がフォローするも、一度崩れたペースは奪い返せず。逆エビ、キャメルクラッチで徹底的に痛められた腰を、矢野のスピアー一発で痛打して、そのままフォール負け。そのあとも真壁に滅茶苦茶怒られるおまけまでついてました。
内容的には若手二人が目立ったというか、先輩陣は後背を守るような展開でしたが、相方曰く。
「亘がかっこよかった♪」
あーそーかよ。評価:3
やっぱり、前座戦争ってのは絶対必要。
3:後藤・斉藤VS西村・カレーマンここでも多分唯一、バッシングを受けない新日本選手西村、でもってカレーマン。わけの分からんカード編成ですが、ヨガ繋がりか?
会場人気はさすがにカレーマンの独壇場。かと言って、他の三人も存在感で引けをとるはずもなく。見せ場が次々に飛び出す好展開。まさに「良い前座」の見本。
西村お得意の倒立を、完全にコピーしちゃう後藤(「お前ならできる!」って声援が飛んでました)、セントーン一発で歓声を引き出すヒロ、そして西村・カレーのスピニングトーホールド・足四の字の見事な競演。悪者の反則攻撃も程よいスパイスになってたし、なによりカレーの軽快な動き。こいつだけ大阪プロから参戦したかのようで。笑いと歓声を同時に煽る器用な真似をして見せます。
ヒロの奥の手、ダイビングセントーンを自爆させたカレーがスパイシードロップを狙うも、後藤のバックドロップをもろに食らってしまい、そこから正調セントーンでフォール負け。でも、会場は十二分に暖まったわけで。良い仕事、見せてもらいました。評価:4
4:村上・柴田VS棚橋・吉江で、前回の盛り上がりを一気に盛り下げた試合(笑)。内容自体は、普段テレビで見る魔界の試合と同じかな。序盤からひたすらつかまり続ける棚橋、でもってそれを生暖かく見守る吉江さん。場外で星野から鉄拳制裁を受ける棚橋、それを生暖かく見守る吉江さん。もうちょい働け吉江さん。
まあ新日本らしいっちゃ新日本らしいんだけど。正規軍の方がちょっと状態が悪すぎたな。この二人もちょっと足踏み状態というか、伸び悩んでる時期なのかもしれません。一応、戴冠経験あるタッグなんだから、もっと見せ場作れなかったものだろうか。
ようやく交代した吉江さん、ベイダーアタックで魔界を蹴散らすものの、膝を狙われてから防戦一方。ソバット、右フック、脇固めの必殺連携技につかまってギブアップ。あなたが負けてどうする吉江さん。ちょっとベルトが遠くなったなあ。評価:2
5:天山・ライガーVS鈴木みのる・成瀬
本日のベストバウト。いや、プロレスの試合に必要なもの全部入ってた。天山にとっては地元だし、盛り上がるのも当たり前なんだけど、こないだベルト失ってよくここまでテンション上げられたなって感心します。
恒例のシューはご愛嬌としても、あそこまで一選手に対して会場が後押しする一体感、それを完全に受け止めてえげつない攻めに徹した鈴木組、決して邪魔にならずにサポートに徹した獣神、その獣神に対して感情むき出しにする成瀬と。特に成瀬の根性は特筆に価する。
終盤、鈴木得意の逆落としからのチョークスリーパー、ダブルマッケンローから成瀬渾身のナルセロック、あわやな場面があった天山ですが、ニールキックからダイビングヘッドバット、そして問答無用のTTDに繋いで見事な逆転勝ち。
五試合目で爆発する会場なんて本当に久しぶり。本当に天山は、ファンから愛されてるよな。秋山が小橋に例えた理由がちょっとだけ分かったような気がする。評価:5
6:安田・長井VS天龍・ノートンインド組よりさらにわけの分からんタッグですな。逆水平しか共通点見つからない。
個人的に天龍って感慨深いものがありまして、今回が生で見るのは初めてなんですよね。新日行かなくなった直後にやってきたし。全日のチケット取ったらその直前に離脱しやがるし。生天龍、迫力はさすが。
この試合、ヤスティと長井の出方で試合が決まりそうに見えたんですが、珍しく調子が良いノートン・いつも通りの天龍にまったく打つ手なし。しかも安田は長井に任せてるし。長井はやりにくかっただろうなあ。
天龍・ノートン組、ラリアットやブレンバスターみたいな普通の痛め技以外は、全部逆水平とグーパンチで試合を組み立ててましたね(笑)。一人延々と食らい続ける長井が哀れ……安田がフックで天龍をダウンさせるも、ノートンの好フォローで報われず。
フライングボディアタックから、パワースラム一発で試合が終わっちゃいました。あれま。もっとパワーバランスを考えてマッチメイクしてくれんと(笑)。
試合後、意趣返しとばかりに魔界総出で天龍を袋にするも、目敏く見つけたノートンが救出……というか、二人で全員蹴散らして意気揚々と引き上げていったわけですが。なんかこの超龍砲、しばらく継続しそうな気がする。
こんな馬鹿馬鹿しい展開、俺は結構好きだけどね♪評価:4
7:中西・アメリカン・ドラゴンVS永田・タイガー久々に中西を生で見たわけですが……あんた誰? 永田と組んでた時より、背中の張りが一桁違う気がするんですが。こんなにでかい選手だったかな?
一部で評価がやたら高いアメドラと、俺の中では著しく評価が低いタイガー4でゴング。さすが、子供の声援はタイガーに集中。将来、タイガーに憧れてプロレスラー目指す子とかいるんだろうか。
序盤から二人とも飛びまくり。ヘビーの二人に交代すれば、蹴りと逆水平の迫力の交差。永田・中西に関して、結構厳しい意見を聞くんですが、今日に限っては十二分に面白かった。永田を強烈に意識する中西が、タイガーに逆水平見舞ってものすごい打撃音を会場に響かせる様は、文句なしに感歎しか出てこない。
結局、得意のアルゼンチンも出ずに打撃の他はスピアーやブルドッキングヘッドロック位しか使わなかった中西なんですが、この路線は一番支持を受けていたときのもの。タクシーネタはもうどうでもいいから、この単純明快な馬鹿さ加減で引っ張って行って欲しいところ。
永田もちゃんと空気を読んで、メインは中西に据えて蹴りまくるし、アメドラもタイガーもそこに強引に割って入るところは十分評価できる。
タイガーが中西をブランチャで抑えてるところ、永田のバックドロップからのリストクラッチ式エクスプロイダーでアメドラが轟沈! 試合終了! だからその技、気軽に使っちゃ駄目だって(笑)。評価:5
8:蝶野・金本VS高山・ヒートなんかいつもの新日本らしからぬ好試合が続く。これで相方が新日に信頼をおいてしまったら、いつか手ひどく裏切られる。せめて一試合、不透明試合を、頼むぜ蝶野さん。と思ってたら期待に応えてくれました。俺はあんたを信じてた。
それにしても、高山はちょっと太ったなあ。小橋とやるときまでには絞ってきて欲しいもの。本線はヒートVS金本を展開しつつ、ヘビーの二人がそれをサポートする展開。こうなると、蝶野組優勢はもはや鉄板。
終盤まで、ほぼ完璧に脇役に徹する蝶野でしたが、技のタイミングや金本との呼吸の合わせ方は流石。高山組は、個人技で見せるものの、どうも今一歩及ばない。迫力がないわけではないんだが……。
ラスト、翻弄される高山を金本がアンクルホールドで捕獲。そこにいきなり蝶野のストンピング! これです、これを待っていた(笑)。金本にパイルドライバーを見舞っておいて試合放棄……とりあえず高山が顔面に膝を入れて終了。
一見さんらしき人が、「え、何々? 理解できないんだけど!」なんて言ってたのが印象的。他の試合の内容が悪かったら、怒り心頭なんですけどね。今日に限っては僕は許す。これで内心の収まりどころが着いた。これでこそ、新日本だよ。こればっかりじゃないけど。評価:1!
総括:結論。今の新日本、面白いじゃん。今日は敢えてストーリーの方は抑え目にしてた興行でしたが、好勝負が続いてくれたおかげで目一杯楽しむことが出来ました。いつもこうなら間違いなく業界の盟主なんだが……ま、今日は当たりだったからいいか。この5大タッグマッチってアイデア、本当は試合内容優先と銘打つNOAHが先にやらないといけなかった。それが返す返すも悔しい。
問題点を挙げるとするならば……メインかな。内容は満足してるんですよ。蝶野の裏切りって結末は、今の流れから言えばむしろ当然です。ただ、これをメインに据える必要はなかったのではと。やっぱりメインイベントは盛り上がって終わりたいもの。第五試合またはセミをメインに据えた方が、観客は満足して帰れたはず。今までの流れなんて、一見さんには関係ないし。なんか思考方法がノアオタチックですけどね(笑)。
MVPは天山。地元贔屓を差し引いても、今日は良かった。良い試合を提供しようとする心意気を感じた。ワーストは吉江さん。もっと動こう。
試合後、心無い若者に突き飛ばされたらしき爺さんを解放する心優しき木村健吾。普段の解説はいまいちだが、こういうところ見せられるとファンは弱いんだよな……。帰宅後、相方から電話が入る。とりあえず感想は?
「亘がかっこよかった〜♪」
…………
「天笠も腹筋割ろうよ!」
割れるか!文責:天笠