2003年6月10日 新日本プロレス
大阪府立体育会館大会観戦記 |
観衆:6200人
直前まで迷いましたが、今回観戦に行って参りました。
弱った……。こういうときに限って色んな方面での出費が嵩み、なかなか観戦に踏み出せない。ましてや、新日本のチケットは高いので尚更。それでも、今回のカードには個人的にも注目したいカードが結構ある故、なけなしの身銭を観戦費用に充当させる。
午後5時30分過ぎに会場入り。以前よりも客入りが落ちたと言われてはいるが、それでもそこは流石に関西に強い新日本といったところか。会場入りするや否や、その熱気に気圧(きお)されそうになる。この時期に大抵関西地方は梅雨入りになるのだが、その屋外よりも蒸し暑さを感じてしまう。
「あー、気持悪い」
躯が何処かだるく、その所為か気分が勝れない。でも、観るからにはそんなことは微塵たりとも気にはしていられない。座席を探して観戦の準備。
「それにしても、大分視力が落ちちゃったなぁ……」
前々から視力の低下を指摘されてはいたが、眼鏡の購入までは考えてはいなかった。しかし、此処最近ちょっと眼鏡を使わないといけない状況も出てきたので、已むなく眼鏡を購入。観戦には痛い出費になってしまった……。
早速眼鏡を掛けてリングを見つめる。なるほど、確かによく見えるが、なるたけ眼鏡には頼りたくないという気持がどうしてもある。
えい、こんなことばかり考えてもしょうがない。そう思っている内に、新日本プロレスのテーマともいうべき「ザ・スコアー」が会場に流れる。
「さてと、これからじっくりと、えべっさんを観るとしますかね……」
こうしてこの日も、孤独な観戦の幕は開けられようとしている……。(第1試合)えべっさん&成瀬昌由&垣原賢人&AKIRA VS エル・サムライ&藤田ミノル&邪道&外道 @ 15分1本勝負
リングにひとり、田中秀和リングアナの姿。そして、場内に流れる"あの旋律(メロディ)"……。
「商売繁昌じゃ笹持ってこい! え〜べっさんじゃ、え〜べっさんじゃ……」
大阪。そこはまさにえべっさんの本拠。府立体育会館から少し南に行けば、そう、今宮戎神社がある。それはさておき、場内の盛り上がり方が尋常ではない。だが、えべっさんのテーマで入場した後、残り3選手がコーナーに上ってポーズを決めているのがなんとも珍妙である。
対するサムライ組は、到って普通の入場。選手コールで呼び上げられる藤田ミノルの体重は、矢張り笑えるもの。とはいえ、以前よりも体付きが大きくなっているのは確か。右肩のテーピングが若干気にはなる。
さて、スーパージュニアの顔見世的なこのカード。外道とAKIRAの先発でスタートしたこの試合、えべっさんサイドは、なんとかしてえべっさんに白星を与えてやろうという気概の試合運びを見せる。それに応えようとえべっさんも奮闘。独特のムーブで観衆をすっかり味方に付けてしまう。
目まぐるしい展開から、えべっさんがサムライに向かってムーンサルト一閃! そして鮮やかにシャイニング・えべザード(えべっさんがシャイニング・ウィザードを遣るとこうなる)を決め、3カウントゲット! 場内の盛り上がりはいよいよ最高潮に!
勝ったえべっさん。いやいや、えべ藤さんとでも言っておこうか。盛り上がる観衆に向かってLOVEポーズ。この白星は、強者揃いのスーパージュニアを戦い抜いた彼に対する、良いプレゼントになったのではないだろうか。
(第2試合)飯塚高史&後藤達俊&ヒロ斉藤 VS ダン・デバイン&ペリー・サターン&真壁伸也 @ 15分1本勝負
如何にも地味さが溢れるカード。燻し銀という言葉が相応しい飯塚組。デバイン組も観る私の方からみれば何処か地味さを漂わせている感じ。
進行もどことなく地味に感じたこの試合。最後は飯塚が得意のスリーパーでデバインを仕留めて終了。ヒロ斉藤がセントーンを3発繰り出したのを観られたので、個人的な満足度は高かったが。それにしても、"一芸に秀でる"飯塚組は、一見地味ながらも試合になるとその個性を旨く発揮している感がある。自分なりに他団体の中堅選手と比較し、打開策を頭の中で色々と巡らせてはいるが、なかなか旨い具合に解答を導き出せていないのが現状。この辺自分でもどうにかせねば。(第3試合)杉浦貴&スタンピート・キッド VS タイガーマスク&田口隆祐 @ 20分1本勝負
第1試合同様、スーパージュニアの顔見世的なカード。メンバー的には、田口の教育マッチ的な感じも受ける。後は、杉浦とタイガーの絡み、及びこの後のJr.タッグから、今後のジュニア戦線の有り様がどうなるのかが、気になる点である。
2人して入場してくる杉浦組。美男のキッドとは対照的に、"不細工"な杉浦。場内からも
「ぶざいく〜!」
という声が。声援なのか野次なのか、実によく解らないところが面白い。そういえば、今日はやけにうざったい野次が飛んでいるなぁ。これとは別に。
対するタイガー組。生で田口を観るのは初めて。結構大きい選手だなと実感。スーパージュニアでは勝星に預かることは出来なかったが、今回の参戦が今後の糧になる様に、努力して貰いたいところ。
杉浦とタイガーが睨み合う。「タイガー、来い、コラ!」と杉浦がアピール。だが、この試合、思ったよりもこの両者の絡みは少ない感じだった。
新日本マットで繰り出す杉浦のスピアーの切れ味。合計3発のスピアーに観客も唸る。体格的に勝る田口を吹っ飛ばすスピアーに、彼の根性を垣間見せられる想い。
試合は矢張り予想していたとはいえ、田口の教育マッチ的展開になる。最後は杉浦のオリンピック予選スラムで決着。試合後何らかのアピールをしようとしたのだろうか、田中リングアナの元に行った杉浦。だが、結局それっきりで退場。
因みに、解説席に座っていたのは、木村健悟ではなく山崎一夫であった。念のため。
(第4試合)西村修 VS 安田忠夫 @ 20分1本勝負
個人的にこういうカードは愉しい。何処からどう見てもベビーフェイスの西村と、何処からどう見てもヒール以外の何者でもない安田。あの猪木祭りでの"感動"から1年半足らず。すっかりその貯金も払底し、魔界倶楽部で胡座を掻いている感が拭えない安田。それを西村マジックでどう翻弄するか。
西村がマイクで安田を煽る。
西村:「貴方、無我に入ったらどうですか?」
これに対してキレる安田に場内ブーイングの嵐。いやはや、実に解り易い。
さて、試合開始。いきなり西村が攻勢に出る! ドラゴンスクリューからスピニング・トーホールド、そしてアキレス腱固めと実に流れる動き。ガンジス川の澱んだ流れとは違った滑らかな流れが、西村の真骨頂。贔屓にしているレスラーが頑張っていると、鬱気味の私の気持も癒されるというもの。
対する安田、逆エビ固めは腰が下りず、タイガードライバーは相変わらずの不格好。それでもパワーで西村を攻め立てていく。
安田がコブラツイストに西村を捉える。だが、決まり方が弱く、逆に西村に斬り返され、そしてグラウンドコブラツイストで忽ち3カウント!
試合時間は非常に短かったが、すっかり西村ワールドに場内が染まった感。試合終了後、高らかに西村修がG1優勝宣言! 再び感動の嵐を吹き荒れさせることが出来るのか、要注目。(第5試合)エンセン井上 VS 村上和成 @ 20分1本勝負
カードを観ても解る様に、この日の試合の中では1番格闘技色の濃い試合。喧嘩マッチを期待するファンも多いのでは。エンセン井上のセコンドには、後藤達俊、ヒロ斉藤、そして小原道由の"犬軍団"が控える。
さて、私自身も喧嘩マッチを期待しての試合がスタート! だが、圧倒的なエンセンペースに村上は試合をさせて貰えない感じ。エンセンの技術に舌を巻く。腕ひしぎ逆十字、フロントチョーク・スリーパー。その動きは実に素晴らしく、村上を巧みに翻弄していく。
矢張り力の差が出たのか。試合はエンセンの圧勝と言ってもいいのではなかろうか。お楽しみはこの後。星野総裁の登場……。そしてマイク合戦。
星野総裁:「びっしびし行くからな!」
小原道由:「ハウス!」
この遣り取りを観ていて、ふとラッシャー木村のマイクパフォーマンスが久々に聞きたくなったのは私だけなのであろうか……。場内は暫しの休憩時間に。
場内が休憩の間、じっくりと観客の入りを確かめる私。リングサイドに空席があったのが、なんとも気になって仕方がない。これも蝶野欠場の影響が少なからずあるのであろうか……。
(第6試合)吉江豊&棚橋弘至 VS スコット・ノートン&リック・スタイナー @ 20分1本勝負
ノートンも実に息の長い選手。入場テーマも、そう言えば初登場時からずっと変わっていなかったような気がするが。リック・スタイナーも実に久々に観る。弟であるスコット・スタイナーの胡散臭い筋肉美とは違い、実にナチュラルな感じを受ける兄の筋肉。それだけに、弟の健康面を少しばかり気に掛けてしまう。
日本陣営の入場。棚橋の髪型が遠目から観ても実に変わった感じを受ける。吉江の髪型は敢えて突っ込まないことにして。それにしても、4選手が並ぶと棚橋が一際小さく見えてしまう。あの"事件"以降、評判を落としてしまった感もある棚橋だが、それでも将来性は十分。嘗てのライバル鈴木健想がもたつく間に栄冠獲得というのを個人的に期待したい。
試合に移る。矢張り外人サイドのパワーは尋常ではない。それに対抗する吉江のヒップドロップに、ちょっとくすくすさせられる。そういや、もう"雷電ドロップ"サンダー杉山が他界して結構経つものだな。
ノートンの逆水平の威力を観て、1度で良いから小橋建太との対戦を観てみたくなる。小橋と外人レスラーとの対決は好勝負が多いだけに、今後を期待したい。
試合全体を通して、外人陣営に押され放しの日本陣営。棚橋が防戦一方の展開に場内からも悲鳴に近い声援が。しかし、そこはプロレスの様式美! 棚橋が一瞬の隙をついてリックを丸め込み、3カウントゲット!
前の2試合があっさりしていたからか、休憩直後のこの試合はなかなかに盛り上がった好試合であったと思う。両者ともG1参戦が決定しているだけに、頑張って貰いたいところである。(第7試合)永田裕志&中邑真輔 VS 中西学&ブルー・ウルフ @ 30分1本勝負
個人的にこの試合、中西学に注目している。K-1参戦を表明している中西が、どういう試合を見せてくれるのか。しかし、返す返す野次が鬱陶しい。
中西の動きを見つめる私。しかし、そこには総合格闘家としての戦いを目指す中西の姿ではなく、何処かでプロレスラーとしての存在感を模索し、苦悩する中西の姿を観た様な気がする。それ故に、物足りない感が。
スピアーの切れ味を観て、率直に想う。
「下手に総合格闘家の道を進むより、あくまでも不器用なりに勝負していく中西学の姿を観たい」
私なりの気持である。アルゼンチン・バックブリーカーを惜しげもなく繰り出す中西の姿を矢張り見たい。
試合は中邑がウルフをフロントネックロックで締め上げて終了。試合後、魔界倶楽部で暴れまくる柴田勝頼が永田を急襲! 「何時でもやってやるぞ!」という気概を観客にアピール。勝ってぼろぼろの永田、その心境は如何なるものだろうか……。さて、待ってましたG1-Climax参加選手の発表! 果たしてその陣容は如何に……。田中秀和リングアナが大画面モニターに注目する様に観客に指令を出す。
新日本所属選手は概ね参加する故、盛り上がりも普通。だが、高山や蝶野の参加が発表されると流石にヒートアップする、そして、あの選手の名前が!
プロレスリング・ノア、秋山準!
これには大阪府立体育会館に陣取った観客から非常に大きなどよめき! 場内での地鳴りの響きを聞くに付け、新日本のファンも矢張り秋山の参戦を期待しているのだなぁ、と実感させられる。果たして、どういう試合を見せてくれるのであろうか……。
最後にちょこっと、アントニオ猪木推薦枠として、ケン・ウェイン・シャムロックの参加発表が成されたが、盛り上がりは今ひとつ。そして、もう1人の推薦枠にある"X"というレスラーは一体誰なのであろうか……。(第8試合・IWGPJr.タッグ選手権試合)獣神サンダー・ライガー&金本浩二 VS 丸藤正道&鈴木鼓太郎 @ 60分1本勝負
この日を待ち望んでいたジュニアファンも多い筈。IWGPJr.タッグ奪還から幾月。獣神、喧嘩王と丸藤の邂逅。そして、進境著しい鈴木鼓太郎が何処まで強豪に食い下がれるか。色んな見方の出来るカードである。
ビジョンに大写しにされるノアの横断幕。田中秀和のマイクが場内の観客を盛り上げていく。それに応えるが如く、ノアジュニア勢の丸藤と鈴木が入場。丸藤の入場に浪速の新日ファンも引き込まれる感が。あの身軽な入場を見せられるとそれも納得できようと言うもの。
対する王者組。今後ジュニア勢を牛耳っていこうというその意気たるや、入場から伝わっていく。個人的にこのタッグはあまり好きにはなれないのだが。ライガーと金本は、戦ってなんぼという気持がどうしても強い。
さて、試合開始! 早速丸藤とライガーの絡みで始まる。最早ジュニアの選手には似つかわしくないと想えるくらいの重厚さを見せるライガー。それに対する丸藤の躍動感溢れる動きが、観客を虜にしていく。掴みはOK。此処からどういう展開になっていくのか。
金本と鈴木。金本としては、丸藤との戦いもさることながら、"新参者"の鈴木に対してどうやって接していくのか。恐らくは、普段通りに喧嘩王振りを強調していくのであろう。テーピングが張られている鈴木だが、気持は決して負けては居られない。
攻勢を強める王者組。流石にライガーの重厚さと金本の切れは素晴らしく、挑戦者組を追い込んでいく。個人的には、挑戦者組は普段通りに試合をしている感じを受けたのだが。この辺りは、ファンの観る向きによって色んな見方が出来るかもしれない。
ライガーは丸藤に対して、吊り天井、そして足掛けスリーパーでじっくり攻め込んでいく。何かと試合後に荒れた口調で話すライガーが注目され勝ちだが、試合を観ていて、丸藤に何かを教えている様な感じを個人的に受ける。決してこの先長いレスラー人生とは言えないかもしれない。そんな中で、今後のジュニア選手に対して試合を通して教えを説いている、と言ったら言い過ぎか。
鈴木が奮闘を見せる! 丸藤に勝るとも劣らないその動きは、ファンのどよめきを大きく助長させる。怪我しているからと言って、泣言は言っていられないのがレスラーというもの。金本やライガーに食い下がっていく。
鈴木がライガーのパワーボムをウラカンで斬り返そうとする。決まるか!? だが、不発に終わり、パワーボムを強烈に喰らってしまう。終わったか? いや、執念で返していく! それを見つめる丸藤。冷静さも覗かせる。
その丸藤の動きは、実に敏捷さ溢れるもの。ライガーの背中に飛び乗り金本にドロップキック! 彼の一挙手一投足に、ファンも驚きを隠せない様子。
不知火を金本に仕掛ける! だがこれは不発に終わり、金本のタイガースープレックスを喰らってしまう結果に。そして、ライガーの掌打→垂直落下式ブレーンバスターの連続攻撃! だが、意地で丸藤は返していく! そして、ライガーに不知火を決めると、場内完全に興奮の坩堝(るつぼ)に! これにライガーも意地で返していく!
そして再び金本と鈴木の攻防に。金本は鈴木をコーナーに追い詰め、顔面ウオッシュ、そして奥の手ファルコンアロー! これでも未だ執念で返していく鈴木! この奮闘を観て、どういう気持であったろうか。
最後は結局金本の足首固めに鈴木が屈する恰好となったが、紛れもない好試合に場内も大満足といった様子。丸藤が観客に手を合わせて謝る素振りを見せていたが、彼らに対する拍手は確かに大きいものであった。
試合後の王者組のコメント。多くのノアファンにしてみれば、いつもの様にうざったいコメントに聞こえることと想う。だが、個人的にはその裏では挑戦者組を讃えていると想う。それをあくまでも彼らは新日本流の流儀でやったまで、という解釈をしているのだが。
それにしても、良い試合を見せてくれて、本当に有り難う。GHCJr.のトーナメントが、楽しみになってくる。(第9試合・IWGPヘビー級選手権試合)王者=高山善廣 VS 挑戦者=天山広吉 @ 60分1本勝負
これまで数え切れないほどのチャンスを与えられながら、後一歩で王座に手の届かない天山。ファンは何時しか彼に対する評価を下げていった。それだけに、天山としても気迫をこれまで以上に前面に押し出していって、王者高山の牙城を崩さねばならない。
一方の高山は実に堂々としたもの。すっかり王者としての風格を備えている。果たして、この試合、どういう結末を迎えるのであろうか……。しかし、何故こうも野次がうざったいのであろうか……。あの"しゅ〜"というのは、返す返す耳障りだ。
敢えて此処で、この試合を観た感想から言わせて貰う。はっきり言って
「情けない! 一体何年プロレスを遣ってきたんだ!」
本当にそういう気持しかなかった。試合時間だけみれば、20分という時間はかなり良い試合を見せてくれたという気持を起こさせるかもしれない。だが、私から言わせて貰えれば、結局王者の牙城を崩せなかった挑戦者という虚しさしか残らなかった。
他のファンは一体、どういう気持でこの結果を見つめているのであろうか……。
前後してしまうこととなったが、試合の流れについて振り返ってみる。序盤は高山に対してプランチャやブレーンバスター、そして頭突きを繰り出して攻め込んでいく。だが、個人的には、どうも高山が受けている感じだったと思う。
高山の反撃! ニーリフトが天山を直撃!!!!
矢張りこの威力の凄まじさは計り知れない。因みにこの試合では合計3発繰り出している。これを喰らった天山。ダメージを忽ち溜め込んでしまった感が。
天山が反攻にとTTDを繰り出すも、心なしか早すぎる様な。膝にダメージを加えようと頭突きやドラゴンスクリューを見せるも、効果はそれほどでもなく。
猛牛スリーパー、ムーンサルトも結局は高山を崩すことにはならなかった。
止めは高山のエベレスト・ジャーマン。この1発に天山は返すことも出来ずに、またしても王座獲得はならず………。
返す返す、力量の差を見せつけられた試合を観て、虚しさを募らせる…。試合が終わって会場を後にする。時間は午後9時過ぎ。さて、いつもの様に自販機に向かい、缶コーヒーを買おうとする。
財布を繙き、残ったお金を覗き込む。開口一番、
「此処で缶コーヒー買ったら、帰りのバスに乗れない……」
この日、私は都合に依りバスで難波に赴いていた。バスの運賃は200円。財布に残っていたのは、210円……。仕方なく、缶コーヒーを口にすることなく、バスに乗り込み難波を後にするのであった……。
帰りのバスに揺られながら、何処か口が寂しい感じを憶える。それは、天山がまたしてもIWGPを獲れなかったことの虚しさに共通するのであろうか……。(観戦記終わり)