2003年8月13日 大阪プロレス
IMPホール大会観戦記

投稿者:天笠さん

観衆:???人


 
二時間前に入ったにもかかわらず客席は大入り。自由席にはぼちぼち売り切れが出だしている模様。つかこれほど入るのなら、府立第二などの1000人クラスの会場を使っても・・・。ま、そこは社長のこだわりと言うやつかもしれませんが。今日はライガーさんが来場ということで、客席にも今時と言えば今時なnwoTシャツを着た方、どう見ても蝶野のコスプレをしている方がちらほらと。やっぱりメジャーは偉大です(笑)。
 本部のゲストはバッファロー吾郎。まあ、全然プロレスを知らない芸人(例:○葉)などに比べると100万倍無難な人選です。

第一試合 社長vs的場(デビュー)
 いつもリングの掃除やら、場外乱闘の時の「下がってください! 下がってください!」の的場君が遂にデビュー。和田・橘が不本意なリングの去り方をした大阪では久々の新人です。見た感じ、ガタイは大阪プロレス内でもなかなか。180センチ、90キロで細身に見えますし、これなら近いうちにヘビー級の身体も夢ではないでしょう。一礼して颯爽と駆けて来る的場は入場テーマすらなし。流石に緊張の面持ちは仕方ないか。
 初めての相手は社長。経験不足は否めず、序盤はガチガチになってるのがどうしても目に付きますが、初めてのリング、初めての試合、そして初めての観客の声援に徐々に慣れてきたか、ドロップキックやヘッドバットで社長からテイクダウンを奪う見せ場も。最後は大阪臨海アッパーからバックドロップで三分で負けてしまったものの、彼にとっては長くて短い試合だったことが容易に想像がつきます。
 社長から「これから頑張ってくれ」の一言に、感極まって涙を流した的場。そう、これから頑張らないといけない。この試合は長い下積みのゴールでもあり、スタートなんですから。目頭を抑えたまま、最後に一礼して去っていく的場を見ながら、そんなことを思った天笠でした。
評価:敢えてしません。するなら今後の頑張りでしょう。

第二試合 ミラクルマンVS福田

 福田も長いことやってるんだから、そろそろ結果が必要な時期に来ているはずなんですが。結果から言えば今日もミラコォーの無難なファイトを突き崩すことはできず。蹴りと関節技で説得力を出すには余程のものが必要だし、相手はベテランだし、仕方ないっちゃ仕方ないですが、折角正規軍同士で当たってるんだからいつもと違うものを見せて欲しかった。
 いや、勿論いい場面もありました。執拗な膝殺しは何度もミラコォーからエスケープを奪い、アストロシザースやミサイルキックと言ったテクニカルな飛び技も観客からのどよめきを誘っていた。ただ、そこからさらにもう一味が足りないような気がする。岸和田愚連隊との試合なら、ラフに耐える気迫だけでなにかしら感じるものが出せますが、相手はそういうのからは一番縁が遠い選手ですから(ミラコォーに関してはそれがちょっと不満に思うこともあり)。
 みちのくドライバーを返したのは良かった。さらにそこからキックで反撃を狙ったのも良かった。で、その蹴り足を捕まえられてのキャプチュードでピンフォール。頑張ってたけど、だからこそ言いたい。福田はまだ変われるはず。
評価:2

第三試合 えべっさんVSくいしん坊仮面VSペロ

 ついぞ知らなかったんですが、「ペロ」ってスペイン語で「犬」って意味だったんですねえ・・・なるほどなるほどってまんまかい。3WAYマッチということで、入場に20分ほどかけてスタート。はっきり言って、えべっさんとくいしん坊が絡む試合は、入場中にトイレ・煙草・グッズ購入が全てこなせます。
 試合中、ことあるたびにやたら仰々しく一礼をする三人+松井。第一試合で緊張の極みにあった的場君をぱろったネタなんですが、新しい仲間を彼ら流のやり方で歓迎しているのがよくわかりました。とは言え、いつものコメディには些かの陰りもなく。いきなりリングの外で待機するえべっさんに松井レフェリーのきついチェック。
松井:「なにやってんねん!! はよはいらんかい」
えべ:「へ? いや待機」
松井:「3WAYマッチだろ! 3WAYマッチ!!」
えべ:「・・・はいはい(怠)。普通に三人て言うたらいいのにねぇ。英語喋りたいだけなんと違うか」
松井:「・・・む〜」
 真面目な話、大阪のコメディプロレスはえべっさんあってこそだなと。リング内で見せる確かな技術、流暢でアドリブにも強いトーク、とっさの機転。これだけそろった選手はなかなかいない。今後も大阪がこの路線を続けていくのなら、えべっさんに匹敵する人材の育成、発掘が急務かも知れません。いつまでもえべっさんが第一線で活躍できるわけではないのですから。くいしん坊以外にも、もう一人ぐらい相方が欲しいしね。まさかこのままペロを犬キャラで使い続けるわけじゃ(笑)。
 二転三転抱腹絶倒の展開を乗り越え、試合の方はくいしん坊がフィニッシュに入ります。えべっさんに関空トルネード、これはペロがカット。そのペロにパワーボムの態勢のくいしん坊。首かっきりフィニッシュのアピールに入るも、これがまた長い。あまりの長さに呆れたえべっさんが、アピール途中にペロ踏み台のシャイニングウィザードを敢行。くいしん坊を見事沈めて笑点お開きとなりました。
評価:3

第四試合 タイガースマスクVS亀

 言い忘れてましたが、第一試合の的場は三試合からはもとの「お気をつけください」ボーイになってます。デビューしてもやることが増えただけだったりして(笑)。
 さて、初のタイトルマッチにも関わらず、タイガースの腰にはベルトはありません。
松井:「タイガース君、あの・・・ベルト」
虎:「ベルトは・・・忘れました!!」
松井:「はぁ? 中止にしましょうか」
虎:「大丈夫大丈夫! 後日郵送させていただきますので!」
松井:「ホンマに大丈夫やろな〜」
虎:「いや〜ドンマイドンマイ!!」
松井:「お前が言うな!!」
 ということで、ベルト返還の崇高な儀式は「透明ベルト」で代用されることに。なんだかなあ(苦笑)。
 試合の方は亀が意外に健闘します。会場人気は案外高い亀。タイトルマッチとしては微妙なカードなんですが、亀の「客を年頭に置いたプロレス」はタイガースを一歩上回ってます。技術的、こと説得力という点ではまだまだな二人ですが、このまま成長していけば何年かのちのメインカードは間違いなし。
 気合が入りまくってた亀が何度も「勝ちたいんやー−!!!」のアピール。そろそろミスるかな〜と思ってたら案の定。ムーンサルト狙いの亀が最後のアピールをした時に、タイガースが絶妙のタイミングで松井レフェリーをスロー。コーナーでもつれて落下した時は完璧なパワーボムの態勢へ。おいおい(笑)
 この機にタイガースの掟破り「勝ちたいんや!!!」アピールが炸裂し(関西圏では、深夜に「勝ちたいんや!!
タイガース」という特番をやってます)、ここから見事なブリッジのタイガーススープレックスで初防衛となりました。
 コメディでしっかりと観客を笑わせつつ、いかにプロレスを見せるか。それがタイガースがこのベルト(今日は透明だけど)を自分の物にできるかという課題ですね。ある意味で大阪のもうひとつの顔の部分を任されたわけだし、責任は重大。まあ、今日の所は及第点ですが、タイトルマッチならこれ以上のものを見せてくれないとね。
評価:3

第五試合 マグマ・ロペスVSカルト・ゴア

 前回までのあらすじ!とばかりに、オープニングスキット。要はロペスとゴアの仲が最近不協和だから、「お前らもう闘って分かり合うしかないよ」と。喧嘩の仲裁をするマグマ兄さんが違和感バリバリでグッジョブ!!です。岸和田愚連隊クビという背水の陣をひいたロペスとそれに対抗するゴア、そしてカルト。一応同門対決とは銘打っているものの、普段は絡まない悪役同士の戦いに興味惹かれまくり。結論から言えば、この試合でもっともインパクトがあったのは先に挙げた三人ではなく、大将マグマでした。
 格や実力はそれぞれの頑張りで補えるものの、迫力・存在感・説得力では三人をはるか後方に突き放しており。ロペスを暖かく見守りつつ、タッチを受けたら猛然と飛び出して一気になぎ倒す姿は、さすがに長年ルードサイドをまとめているだけのものはあります。ボディスラム一発で観客を立ち上がらせる選手ってなかなかいないですよ。逆に、この試合の主人公でたるロペス、さらにはゴア・カルトにとっても、これが現実の壁と言うものでしょうか。ロペスはともかく、カルト・ゴアの両名にとってもこの域に達するのは至難の業だと感じさせられました。
 試合の方もマグマの独壇場。問答無用のラリアット、問答無用のマンドリラー、問答無用のスーパーフライとカルト・ゴア組は防戦一方。
「お前らラストライドが見たいやろ!!!」
 というアピールつきのラストライドをショルダースルーで切り替えしたゴアが、ロペスをリミッターショック(コタローが使うあれです)からフィッシャーマンズスプラッシュで仕留めて試合終了。しかし、試合を掌握していたのは完全にマグマでした。いつかカルト、またはゴアがマグマを超える日は来るのか? 今日の試合を見れば、それは遠い日だと言わざるを得ません。
 試合後、大の字に横たわるロペスにタイガースが接触を試みます。ブラックタイガースとしてよきライバルだったたロペスだけに、放って置けないものがあったのか。ロペスは握手を拒否するも、この展開はプロレスの教科書によれば、十中八九タッグ結成の流れですからね(笑)。もしかしたら、インフィニティに匹敵する名タッグが、大阪に生まれるかも知れない?
評価:4

第六試合 ビリーVSガンマ

 「ガンマがビリーの技を無断使用した」というしょーもない理由で組まれたシングルマッチですが、好カードには間違いなし。場内の期待も俄然高まる一方ですが、そこに油を注ぐ場内アナウンス。
「なお、この試合は大阪プロレス選手権者村濱武洋への時期挑戦者決定戦でもあります」
 そんなスキットは初耳ですが(笑)。しかし一番びっくりしてたのはリング上の二人でしょう。ひょっとして社長の即決?w 思わぬ戴冠のチャンスにビリーの気合が当社比2割増。しかしこれが予想だにせぬアクシデントを産むことに。
 もともとガンマは前回の挑戦者決定トーナメント前に右腕を痛めており。今日も肩を大きなサポーターで覆って入場してきたわけで。準決勝にツバサに敗北したのも直接的な原因はこれでしょう。一ヶ月たってもまだ肩のサポーターが外れないところから、かなりの重症を予想させます。序盤は軽快な動きでビリーをあしらう場面も見えたのですが・・・場外に落ちた時から急に動きが悪くなります。右肩を抑えたまま動けない。妙な落ちかたでもしたのか、リングに上がることすらできません。ビリーも威勢良く挑発を繰り返すも、ただ事ではない様子に不安は隠せず。
 結局、なんとかリングに戻ったもののとても試合が出来る状況ではなく、松井レフリーが戦闘不能と判断して試合終了。ビリーはもちろん、観客にも後味の悪さだけが残りました。後日調べたところでは、右肩脱臼で当面は長期欠場。個人的にはこれを機会にじっくりと治してもらって再発などないようにしてほしいと。
評価:点はつけられませぬ。

第七試合 ライガー・村濱VSインフィニティ

 セミでガンマがああなっちゃったので、四人が奮起したわけでもないでしょうが。セミのもやもやを吹き飛ばすやたら熱い試合に観客大熱狂。IMPホールは燃えておりました。のっけから気合入りまくりのライガー・バッファローはともかく、マザーホールでタイトルを争った村濱・ツバサ間のライバル関係、さらには城ホール以来のリベンジと見所も多く、まさに全てが見せ場状態。
 序盤は意外にもライガーが捕まる展開。腹部への集中攻撃で悶絶させておいて、掌打封じの腕殺しはこの試合にかける二人の意気込みが伝わってきます。大阪の弱点は好勝負数あれど名勝負が少ないこと・・・と常々思っていましたが、メジャー団体の武道館・両国国技館クラスで行われていてもおかしくない壮絶な試合。タッグマッチながら、ライガーがあれほど追い込まれたことってちょっと記憶にない。パワーボム、ライガーボム、アッパー掌打、そして雪崩式フィッシャーマン。名だたる必殺技をことごとく返し、ブレンバスターを首固めで切り返す姿は「ひょっとして、ライガーとられちゃうかも」なんて期待感を抱かせるに十分でした。明らかに、二月の城ホールよりベルトには近づいていたと思う。
 攻撃面でも、掌打を食らいながらなおもラリアットであわや3カウントの場面を作ったり、ダブルインパクト式のダイビング喧嘩キックで村濱をしばし戦闘不能にしてみたり。「ライガーから獲って見せてみい!!」なんて応援が自然とファンから上がったのも無理はない。
 しかし王者組はやはり強し。考えてみれば、この二人に勝ったことがあるのはNOAHのチャンプしかいませんし。再三のピンチを凌ぎつつ、的確にチャレンジャーを分断できるのはこのタッグが円熟味を増している証拠でしょう。フィニッシュは圧巻。村濱がトペコンでツバサを釘付けにしている間、ライガーが渾身の掌打。これをかわしてラリアットを狙うバッファローに返す刀で一撃、マットにバウンドするバッファローを無理やり引き起こし、幾度も切り返された垂直落下式ブレンバスターを遂に決めて文句なしの3カウント。決まった瞬間に大の字になるライガー。この試合が御大ライガーにとっても死力を尽くしたものだったということか。
「負けたら解散」、戦前にそう公言していたインフィニティにとっては無念の結果ではありますが、是非三度目の正直を狙っていただきたい。これまで見た大阪の試合で、最高の試合でした。
評価:5

 試合後、何とかインタビューに答えようとする王者組を、岸和田愚連隊が急襲。セミセミでは残念ながら見れなかったらラストライドをライガーに、チョークスラムを村濱に叩き込んで完全KOという衝撃のシーン。
「おいお前らな! 俺らが大阪で一番強いんやないかい! タッグベルト、はよ挑戦させ!!」
 満を持したマグマの挑戦表明に会場は再び爆発! ライガーVSマグマ・・・これが実現する日が来るとは。特にライガーは完全に失神しており、もはや歩ける状態ではない。これを見ると期待感出ちゃうよ〜。悪役だけど(笑)。

総括

 初のIMPホール進出、今日はもうマグマの存在感とメインの出来のよさに尽きるんじゃないでしょうか。ここ最近見た試合(大阪に限らず)ではぴか一。逆に言えば、他の試合が全部食われちゃったのが痛いかな。若手の底力を見せられる試合が多かったんですが、今日はトップの地力を見せ付けられた思い。あれを超えようと思ったら、今の若手は並大抵の努力では出来ない。
 話のひっぱり方が巧みで、嫌でもNEXTに興味を抱かせる展開は大いに買いです。



社長○(バックドロップ)×的場
ミラコォー○(キャプチュード)×福田
えべ○(シャイニングエベザード)×くいしん坊・ペロ
タイガース○(タイガーススープレックス)×亀
カルト・ゴア○(ダイビングボディプレス)マグマ・×ロペス
ビリー○(右腕脱臼)×ガンマ
ライガー○・村濱(垂直落下式ブレンバスター)ツバサ・×バッファロー