2003年2月1日 大阪プロレス
大阪城ホール大会観戦記

投稿者:天笠さん

観衆:7868人


え〜久しぶりの観戦記です。しかもノアにあらず。マスコミのみならず、ここでも一部投稿者にカルト(大王にあらじ)な人気を誇る大阪プロレス。僕も何度か観戦経験はあるんですが……。遂に城ホールで興行を行なうことになるとは。

 案の定二時間前についても黒山の人だかり。はっきり言って、下手なメジャー団体より入ってる感あり。特筆すべきは客層のバラエティー。下は幼稚園児からいかにもプロレス好きな兄ちゃん、いかにもプロレス見なさそうなおばはん、女子中学生、パンクロッカー、果てはゆうに70は超えていると思しきご老人まで。
 こういうのを見てると、武藤が言ってる「新規顧客の開拓」の大切さをまざまざと感じさせる。多分今回の観客で純然たるプロレスファンは少ないはず。
 それにしても城ホールって実にプロレス向きの会場ですね。キャパシティも大きいし、すり鉢状でどの席からもリングが良く見れる。なんで入らないんだろ。

 今回は吉本興業全面協力ということもあり、ケンコバやランディーズが女性ファンの黄色い声援を集めます。ひとしきりお客さんに絡んだ後、
「はいカット!」
「お騒がせしました−!」
 と突然素に戻る芸人たちが妙に笑えました。

 結局、当日券売り場が混み過ぎたとかで十分遅れで試合開始。ちゃんと待つんだもんな〜律儀な団体だ(苦笑)。

「よ! 九州の有名人〜!!」
(第一試合 アステカVSブラック・タイガース)

 と声をかけられてたアステカ。マスカラスの如く、オーバーマスクをリングサイド席に投げ入れて入場。対する黒虎はなんかもーみたまんま。マーク・ロコを一回り小さくした感じ。当然試合も、獣神VSブラックタイガーの量産型もしくは再生怪獣(苦笑)といった面持ちです。
 序盤はメキシカンストレッチ(アステカ)と急所攻撃(黒虎)の応酬。二人とも実力者なのはわかるんですがなんか地味目。大阪の選手が派手すぎるのかも。
 アステカのスタンガンアトミックドロップから徐々に空中戦にシフト。スタナー・ミドルキック・ナガタロック2と行ったところで攻守交替。ダブルアーム式スウィングDDTから、クラッチを切らずに羽根折固め、返されるとすかさずタイガードライバーと。引き出しの多さは二人ともかなりの物があるだけに、会場に蔓延するマターリモードが惜しいです。
 終盤、黒虎の奥の手、暗闇脳天が炸裂。カウント2で返されたあとの二発目、体を入れ替えられるのはお約束。掟破りの逆暗闇脳天杭打ちから、顔面に低空ドロップキック⇒垂直落下ブレンバスターにつないだアステカに軍配が上がりました。
 フィニッシュまでプチライガーかよ!という突っ込みは、プロレス好きなら誰でも思ったはず。

「もしもし亀よ亀さんよ。世界のうちでお前ほど歩みの鈍い者は無い♪」
(第二試合 トルトゥガー・ナイトマスターヒュウガVS怪獣キングマンドラ・ポリスウ〜メン)

 ……と、テーマ曲と裏腹に、全力疾走でリングインするトルトゥガー(以降亀)。これだ、これだよ。インディーっぽさ200%のキワモノファイト。しかも男女混合ミクスドマッチ。これをB級と言わずしてなんと呼ぶ。
 なぜか警察と組む怪獣。三億の技を持つらしいポリス、そしてパンフで正体日向あずみと思い切りばらされてたクーガ……じゃない、ヒュウガ。肩の力を抜いて馬鹿笑いしながら見るのが正しいマナーってものです。
 試合の方は拝み渡り⇒股間打ちなどの定番ネタを見せつつ、怪獣のニールキックやポリスの雪崩式フランケン、日向のロコモーションジャーマンなどでしっかり魅せていく展開。意外な名勝負か!?と驚いていたらやっぱりやってくれました、ミクスドマッチの定番ネタ。すなわちセクハラ。
 怪獣がヒュウガを押し倒すぐらいは、ポリスが厳しくチェックを入れるに留まっていましたが、終盤になって脚光を浴びたのは亀。手始めに怪獣をダブルレッグスタンディングストレッチ(……と書くといかにもプロレス技っぽいですが、早い話大股開きですなw)に捕らえてご開帳〜♪ あまりの精神的ショックからか、卒倒した怪獣を抑えてカウント2,8。入ってきたポリスにフライングメイヤーから御開帳〜ってさすがにポリスは中々させてくれない。リングサイドの男性客大喜び! 両足が開ききる寸前、見かねたヒュウガがカットに入ります。
「可哀想だろ!!」
 味方のはずのヒュウガに邪魔された亀、何をとち狂ったかヒュウガにご開帳を仕掛けてまたも男性ファン大喜び。あとはご想像のとおりですな。
 三人にぼこぼこに踏みつけられた挙句、ヒュウガとポリスから2プラトンのDDTonジェラルミンケース、おまけに怪獣から強烈極まりないBTボムまでつけられて哀れ亀頓死。
 う〜んバカだ(褒め言葉)。シモネタなれど、久々に大笑いした気がする。この後にくいえべが控えてるのにこんなに笑っていいのか?

「流血! 流血した!」
(第三試合 金村キンタローVS大王カルト)

 そう、大阪では異色のハードコアマッチです。金村選手は個人的に好きな部類に入るのですが、生で見るのはこれがお初。流石にジュニア主体の大阪に入ると一回り大きく見えます。ブリブラダンスを一生懸命踊る子供がいるのを見ると、ハードコアにもかかわらず意外に浸透力あるみたいです。
 対するカルトはいつもの鉄仮面ではなく、LOV時代のコスチュームで入場。勿論、クリーンに試合が始まるわけもなく、ゴングを待たずしてカルトの奇襲。
 まず目を見張ったのは金村の身体能力。あの巨体でドロップキック、さらにはウラカンラナまで綺麗にこなす。伊達にインディーの帝王と呼ばれているわけじゃないですね。
 無論クリーンファイトだけじゃなく、本分のラフもしっかりとこなします。長机・椅子の使い方に感心したのは初めての体験ですね(笑)。対するカルトも、金村の隙を見逃さずにきちんとお返しする点は好感が持てます。七メートル程の高さから机の上に落下させ、場外乱闘でペースをつかむや椅子盛りの上にパワースラム、そして噛み付き! ここで初めて金村が流血。でも鮮血に染まる金村を見て、怖がるどころか声援が大きくなる子供応援団。あんたら、大きくなったら通になるで(苦笑)。
 声援に押されたか、スピンキックで逆転の糸口をつかんだ金村、カルトの体に机を乗せてダイビングボディープレス。そしてコーナーに机を重ねて、雪崩式パワーボム狙い。
 この「あ、あ、あ〜〜〜〜!!!」って感覚はハードコアならではですね〜(笑)。必死にブレンバスターで返すカルト。この時、机の角が金村の腰を直撃するアクシデントもあり、カルトが遂に畳掛けに入ります。アルゼンチンから前方に落とし、引き起こして必殺チョークスラム。
 これを返した金村、負けじと椅子をあしらってからダイビングセントーン。爆YAMAスペシャルって言うんでしたっけ。カウントは2。お互いのフェバリットホールドを交換し、消耗戦になってきてます。
 続けて狙ったスーパーフライは剣山一輪挿し。ここを逃しては勝機が無いカルト。椅子の上に狙いをつけて、ペディグリーの体勢へ移行。これが決まれば……という場面。絶体絶命の金村は、これをなんとビーチブレイクで切り返し、椅子の上に垂直落下。
 誰もが決まったと思ったところで、さらに止めのサンダーファイアーパワーボムをカウント1で跳ね除けるカルト。いったいこの二人はなんなんだ!?
 裏返した机のスチール部分へのSFパワーボム二連発で、カルトに引導を渡した金村でしたが……凄い試合だった。終わってみればハードコアと言いつつ必要以上に試合が荒れることも無かったし。面白いのはルールではなく、選手のポテンシャルに依存するという当たり前のことを改めて思い知った一戦でした。

「かっこ悪いところ見せてマイクアピールするのもなんですけど……」
(第四試合 ミラクルマン・ビリーケン・キッド・タイガースマスクVSデメキン・高井・福田)

 REAL・OSAKA・LIVEというのをご存知でしょうか? 週プロの購読者ならご存知だと思いますが、大阪の要素のひとつであるお笑い・ストーリー部分を敢えて排し、クオリティを重視した6人タッグマッチのことです。一説には新日ジュニアに匹敵する完成度を誇る(個人的には褒めすぎだと思うw)というこの名を冠した試合が、休憩前に見れるという贅沢。デルフィン気合はいりすぎです。
 ご存知の通り、大阪プロレスのタッグマッチは試合権というものが存在せず、トルネードタッグと呼ばれる形式で行なわれます。何時どこから攻撃が来るか判らない緊張感、若手勢の気迫とベテランのテク。世界最速のタッグマッチの所以です。
 さて今回の面子は正規軍三羽烏のデメキン・高井・ビリーを筆頭にベテランのミラクルマンが脇を締め、若手の福田・タイガースがスパイスを利かせてます。これで面白くならないわけがない!……ということで試合前から一番注目してたのが、この第四試合なんですね。因みに今回は詳しい試合内容は抜き。展開がめまぐるしすぎて、見てる天笠もわけがわかりません(自爆)
 個人的に気に入ったのは新人タイガースマスク。なにが良いってドロップキックがめちゃくちゃ美しいんですよ。細身の身体なれど、バネを利かしているせいか中々の迫力。ドロップキックだけなら大森と張りますよ。コーナーに詰めてのピッチング式チョップやスライディング(勿論決めた後はセーフ!の掛け声つき)も、大阪人好みで良い(ま、虎を見たら反射的に応援したくなるのが大阪人ですけどねw)。負け役の位置を脱出したら、ガンマ並に伸びる選手だと思います。
 福田も綺麗なアストロシザース、さらにはスペシャル流星キックを見せるし、ミラクルマンは複雑極まりないストレッチ技、デメキン・高井・ビリーもそれぞれの得意技で魅せる魅せる。プロレスファンとして、至福のときを過ごさせてもらいました。
 でも今回光ったのはタイガースマスク。「長州さ〜ん」の雄たけびサソリ固め、パワーボムと高井に攻め込まれながら、味方のカットもあわせてよく耐える。逆に六甲降ろし・裏投げで反撃する根性を見せます。
 ラスト、デメキンがフィッシャーマンズスプラッシュを狙った時はあわやの場面でしたが、なんとデメキンがポストから転落。この機を逃さないミラクルマンがみちのくドライバー、次いでビリーのファイアーアバードスプラッシュと完璧なプランで福田を押さえ込んで試合終了。
 試合後、デメキンがマイクアピール。
「こんな情けない試合見せてこんなことは言いたくないんですが、今日で大阪のリングは最後になります」
 不安な表情を隠せない観衆。無理もない。ディック東郷・星川以下主力選手の大量離脱も突然でした。
「僕はこれから、メキシコに修行に行ってきます!」
 大歓声!
「帰ってきたときは、大事なところでミスをしないように、タイトルなんかに絡んでいきたいと思いますので、それまで大阪プロレスをよろしくお願いします!」
 場内「がんばりや!」の声があふれると(笑)。たまにはこういうハッピーエンドもいいっしょ?

「僕とこいつ(くいしん坊仮面)は、8年前に小さい場末の会場で、素顔で試合しました。そして今日、こんなに沢山の人に見てもらえて、ホンマにプロレスやってきて良かったと思います」
(第五試合 くいしん坊仮面VSえべっさん)

試合後のえべっさんのマイクアピール。いつも完璧なまでにキャラに徹してる二人ですが、それだけに出てきた言葉は計り知れなく重く感じました。それにしても、まさかくいえべの試合でほろりとさせられるとはおもわなんだ(笑)。
 で、試合の方ですが最初の入場だけで優に二十分を超えてました(苦笑)。えべっさんはえびす娘を引き連れて入場。それに対抗したくいしん坊はパラパラガールズを伴ってお菓子配り。更に天井からパラシュートつきのお菓子がふりまかれるという演出。スタンド席置いてけぼり……羨ましい。
 形式はいまどき珍しい60分三本勝負。ゴング開始直後、気合満々でボディスラムに行くえべっさん、押しつぶすくいしん坊仮面……1,2……3!! っておい!
 開始三秒でいきなり土俵際です。大舞台でもこてこてやな〜と感心したその僅か90秒後、アームロックからの社交ダンスという定番ネタに引き込んでおいて、えべっさんの起死回生スクールボーイ! 1,2……3! ってなんでやねん! 三本勝負の意味が(以下略)。
 ここでえべっさん、くいしん坊仮面双方に大エール。ついで松井レフリーもコールを受けてご満悦、これを見たえべっさんが後ろから一撃。
えべ:「ええか、お前の時代は絶対に来んからな!!」
 注釈:松井レフリーは大阪唯一のレフリーである以上に、くいえべのつっこみ役という重大な仕事があるのである(NOAHのマイティみたいなもの)
 コールを受けてご満悦の二人。そのまま肩を組んで帰ろうとします。
松井:「待たんかい!」
 そして怒り心頭でお説教。
松井:「あのな〜タイトルマッチやねんからもっと真面目にせんかい!」
えべ:「あ〜そうですか。真面目にやったら良いんでしょ(怒) どーもすみませんでしたー」
 えべっさん逆切れ。
えべ:「俺たちの真面目なところが見たいかーー!!」
 みた〜い!という観衆。これ、ひょっとして山川のパクリですか?w
 その後はプロレスっぽいながらもめちゃくちゃスローモーなムーブを見せる二人。やったらめったなオーバーアクションで松井レフリーは呆れ顔。観衆は大爆笑(笑)。でもあのやる気なさげな動きでも、しっかりシャイニングウィザードを決めるえべっさんって実は凄い?
 すったもんだ末にようやくえべっさんがフォール、カウント2で返したくいしん坊。
えべ:「おそい〜〜〜〜! もっと! ハチのように!」
 わけわからんわ(笑)。
 再度のボディスラムからフォール! くいしん坊はカウント2で返す。
えべ:「……殺しまっせ?」
 そのくせくいしん坊がフォールしたら高速カウント。まさにハチw
えべ:「なんで俺のときだけ〜〜!!」
だだっこになるえべっさんに再度の高速カウントが襲い掛かる!! 本当の敵は松井レフリーだ!!(爆)
 で、このあと漸く空中戦が解禁されるんですが、流石にくいしん坊のラ・ケプラーダやウラカンラナは一級品ですね〜。爆笑から感嘆に容易くシフトできるのが強み。えべっさんのえびす落しがずばりと決まるもカウント2。最大の見せ場はやっぱり関空トルネード! これをえべっさんがクリアした時はこれまでで最高の驚きでした。まさか関空が返されるとはw
 続けて放ったブファドーラをキャッチしたえべっさんが、ボディスラムそして掟破りの逆関空トルネード! 滞空時間がめちゃくちゃ長いのでただのムーンサルトかと思いましたが、よく見るとちゃんと空中で回転しています。これで死闘に幕。試合後は開運トルネードとアナウンスされてました。これぞ新必殺技?
えべ:「え〜来週からたこ焼き屋のバイト決まってたんですけど……間違えて勝っちゃいました(笑)」
 気づけばシングル初勝利なんですよね。キャラクター剥奪マッチのため、くいしん坊はキャラを変えなければならず、消沈モード。
えべ:「来週から、くいしん坊はキャラが変るんですけど、次のキャラって見てみたくないですか?」
 見たい〜コール。
 するとカッコよさげな音楽とともにビジョンに映し出される映像……
『現代科学の技術を結集した超合金ロボ! その名もスーパーロボK』
 見た目はまんまくいしん坊のメカ化です。途端にやる気満々で骨法の構えをとるくいしん坊。
えべ:「お前めっちゃやる気やん……北尾の真似はええっちゅうねん。それはKKやん。で、これから改造手術受けるん?」
 Vサインのくいしん坊に羨ましそうなえべっさん、
えべ:「それにしてもかっこいいな〜僕のぶんも……ありますよね? ちょっと見てみたいな〜(観客から見たいコール)、来週からそれで良くかも知れへんし……」
 途端にかかるサザエさんのテーマ、ビジョンには「えべ平さん」の姿が。途端に卒倒しそうになるえべっさんに追い討ちを掛けるかのように、ファンからえべ平コール!
「う……うるさい!」
 こんな感じでいつもと変らない漫才トークのあと、冒頭の言葉を搾り出すように語ったえべっさんでした。
 本当に、この二人にとっては大阪のリングは最後の楽園なのかも知れない。

「ドカ! バキ! ブシュ! FUCK YOU!! 」
(第六試合 TAKAみちのくVSGamma)

 いつものイントロから津軽三味線の例の曲。たか、さすがに人気は世界級です。大阪みたいなローカル団体でも、一見さんばかりの城ホールでも、入場だけで大歓声を起こせる男です。対するガンマはやっぱりブーイング。この男って本当にブーイングが似合うんですよ。でもって、それを実に気持ち良さそうに受ける。それが実にサマになるし、なにより華があります。
 試合の方はガンマのいきなりのラリアットでゴング。余勢を駆ってかなり高角度の高角度パワーボム、エスケープしたTAKAを、かなり思い切りのいいトペで追撃! この時点で早くも場内(つーかガキども)はTAKAコール一色。中には、
「ガンマ負けろ〜〜!!」
 なんて声も聞こえます。・・・・・・あ、別にタカファンじゃなくて、ガンマ嫌いなのね(苦笑)。
 場外から戻されても、頭を抑えたままうずくまるタカ。さっきのパワーボムで後頭部を痛打したのか、しばらく動けないようで、悶絶しながらガンマのラフ殺法でいいように蹴り転がされます。すわ秒殺か!?っと思ってたら、ガンマは得意のダイビングヘッドバットの体勢。おいおいちょっと早すぎない!?
 そしたら案の定無人島に漂着(辻風形容詞)。何事も無かったかのように立ち上がったタカ、一言
「ヴァ〜〜〜〜〜カ!!!」
 ん〜やっぱり上手いね。三味線の使いどころといい、相手の極め台詞をぱくるタイミングといい・・・・・・。別にガンマが悪いわけじゃないが、ひとつひとつで格の差というものを思い知らされます。ここから反撃開始。絶品のブランチャで場外乱闘に持ち込みます。これがまた長い。一瞬両リンまで脳裏に浮かぶほどの際際でしたが、なんとかリング状に復帰。ガンマ、なんとか目潰しから急所キックで反撃するも・・・・・・ここからは一方的なTAKAタイムでした。
 場外乱闘の間に考えたのか、それとも試合前から決めていたのか。先日のNOAH大阪府立を思わせる、TAKAの非情なまでの右腕攻め。ロープを使った腕折から、拳での拷問攻め、ショルダーアームブリーカーの連発。ガンマの古傷の右腕を、それこそ客席が引くまでの無情、非情、冷酷。小川の場合はまだ良かった。あの場合は明らかに高山は格上の存在でしたから。しかしTAKAは違う。正面から格下の相手を叩き潰しにいってました。凄絶だったが、不思議とTAKAにブーイングは飛ばない。
 ガンマの苦し紛れの反撃も、するりとかわして胴締めスリーパー、そしてなおも脇固め。ギブアップの緊張感から凍りつく場内、あきらめないガンマを見るや、ついにTAKAが伝家の宝刀を抜く! 後頭部が背中につくかと思うぐらいに締め上げるジャストフェイスロック!
 最初の山はここでした。必死の匍匐前進でのロープブレイク後、立ち上がったガンマ、一瞬の隙をついてバックを取ってジャーマンスープレックス。カウント2で返されると間髪いれずにバックドロップ。ガンマが反撃したのに驚いたわけじゃない。あれだけブーイングを飛ばしてたガキどもが、
「ガンマ頑張れ〜〜〜〜!!」
 の大合唱。こいつは驚きました(笑)。
 その声援に後押しされたか、バックに飛ばしたタカの急所蹴りを腿でガード。後ろから強烈なサッカーボールキックって、それは蹴ったらあかんボールやて!! ひるんだところをジャーマン、返されると投げ捨てパワーボム、そして、すばやくコーナーに登ってのダイビングヘッドバット、これはクリーンヒット!
 とどめはやっぱりブリッツェン! 知らない人のために書くと、高野落しからのフェイスクラッシャー。TAKAもこれを食らっては・・・・・・というのは分ってるようで、必死に抵抗。背後に落下したところで、電光石火のジャストフェイスロック。惜しくもニアロープでしたが、ロープに伸ばしたガンマの腕をキャッチして、腕拉ぎ十字固めに移行。自分のフェバリットホールドをさりげなく撒き餌に使うのが憎い。
 ブレイク後もスーパーKの乱れ撃ち。この技、T〜Wまであるそうですが、どれがどれやら(笑)。しかし勝負どころは分っていたのか、顎を狙ったとどめの一蹴りをガンマはがっちりとガード、そして、痛む右腕でラリアット。それほど華々しい技は使ってないのに、まるで若手のようで気持ちで魅せていくガンマ。
 そして万難を排したブリッツェンまでようやく漕ぎ着けることに成功。これをカウント2で返されたところで、事実上ガンマの勝ちはほぼ消滅しました。まだガンマスラッシュが残っているとは言え・・・・・・ニールキック、ラリアットでの攻撃も、TAKAのスーパーKあっさり散らされます。そしてとどめの変形ジャストフェイスロック。痛む腕を自分の首に巻きつけられ、頚動脈を締め上げられながら苦悶の表情を浮かべるガンマ。
 無念のギブアップ。終わってみれば全てを受け切ったTAKAの完勝と言っていいでしょう。格も技量も及ばなかった。負けてなかったのは気持ちだけ。一言で言うなら玉砕か。
 それが分っているのか、悔しさをリングにぶつけるガンマ。歩み寄ったTAKAが握手を求めますが、激情の張り手。反射的に張り返したTAKAが再び手を差し出すと、今度はがっちりと握手。

 試合後に、切れた息でガンマがアピール。
「今までずっと・・・・・・一人でやってきたんですけど・・・・・・」
 意外な丁寧語。
「今日、その答えがやっと出せました」
 それだけ言い残してリングを去るガンマ。混迷の客席。まさかこの直後にあんなことになるとは(笑)

「俺たちは世界で一番強いハートを持ったレスラーだと自負している。ゆえに勝つのはインフィニティだ。以上!」
(第七試合 大阪タッグ選手権 インフィニティVSライガー・村浜)

 上記はパンフのインフィニティのコメントなんですけど、確かにハートは負けてなかった。元々、今回のテーマにハートというのは重要なキーワードでしたから。
 先発は当然のごとくライガー・バッファロー。ハートを見るって部分じゃ、やっぱり打撃戦でしょう!ということで逆水平の打ち合い。分っていたことですが、やっぱり獣神に比べると迫力その他ではバッファローは見劣りしますね。でもそこは気合いでカバー。結果的に当たり負けなしのところまで持ち直します。
 続くツバサは村浜に風車式バックブリーカー。怪我の多い二人ですが、今日は絶好調か。村浜の逆襲ニールキック→ライガーのダイビングボディプレス、パイルドライバーと仕掛けてこられ、受けに回っても虎視眈々と反撃のチャンスを狙い、エルボー合戦から得意の連携に持っていきます。エプロンに座らせた二人にサンドイッチのミサイルキック、エプロンギロチンで村浜を捕まえると、あとは波状攻撃。エルボードロップからツバサの拷問ストレッチがガッチリ決まります。腕を極めておいての反り逆片海老がため! これはえぐいです。
 本当に、今までこれほどのタッグチームが大阪ローカルで燻っていたなんて、改めて信じられない。ようやくニールキックで窮地を脱した村浜はライガーにスイッチしますが、ライガーもインフィニティの連携にいささか手を焼いている様子。やはり即席タッグじゃ・・・・・・と思っていた矢先、それならシングルプレーだと獣神がいきなりぶちぎれます。
 ドロップキック狙いのツバサに渾身の掌打をカウンターで一閃。なんと、これでツバサはしばし夢遊病状態に陥ります。さすが獣神。この問答無用感は積み上げてきた歴史の年季が違います。次の投げ捨てパワーボムで、ツバサ半失神。強引に引き起こしておいてのバックドロップ。この面子の中じゃ、一人だけパワーが違うのが素人目にも良く分ります。
 観客のどよめきが連発になりかけたところで、村浜が場外のバッファローにトペ、その間にライガーが必殺ライガーボムに・・・・・・いけない! ツバサのフランケンシュタイナーで丸め込まれ、場外に・・・・・・と思ったら、いつのまにかリング状の主役はバッファローと村浜に変わっています。あ〜だから大阪のタッグマッチは嫌なんだ! 落ち着いて見られやしない(笑)
 こちらも必殺技が出てくる段階に。村浜総合モードの切り札、ダブルリストロックがガッチリ入ったところでした。まだグラウンドの体制になってないが幸い、シュミット流バックブリーカーで叩きつけるも村浜離さず。入ってきたツバサがようやくカット。
 ここで村浜、メチャクチャスピーディーなブレンバスターでツバサをたたきつけ、バッファローにフライングニールキック、それを受け止めてバッファローがパワーボムの体勢で・・・・・・ってもわけ分りません!(笑)
 あとはもうダイジェスト。バッファローを捉えた村浜とライガーはダブルインパクト狙い。村浜のダイビングニールキックをガードしたバッファローが、ライガーを丸め込んであわやの場面を作り出します。村浜をツバサが抑えている間にバッファローのラリアットが連発でライガーに叩き込まれ、ようやくライガーを自分たちと同じ土俵に引きずり込みます。
 起き上がってくるところを、ラリアットの体勢のまま静かに待つバッファロー、逆に会場は大盛り上がり。でかい投げ技が決まってないのが少々気にかかるが・・・・・・バッファローダッシュ! やっぱり狙ってたカウンター掌打!! やっぱり問答無用!(爆)
 一回転して倒れたバッファローに雪崩式狙いのライガー。そろそろフィニッシュ宣言か!?と思った矢先、インフィニティの異常なまでの粘りがスタート。ライガーを叩き落して、村浜のお株を狙うダイビングニールキック。なんとかこらえたが、危機はまだまだ。今度はツバサが掴まりだします。投げ捨てジャーマン、蘇生したライガーが、今度はツバサに雪崩式フィッシャーマンバスター! これをカウント2で返したツバサに容赦ない畳み掛けが。
 ライガー、目一杯見栄を切ってからいつもの体勢へ。垂直落下ブレンバスター、これが完全に決まって万事休す。松井レフリーの右手がマットを三回叩く・・・・・・直前にバッファローが滑り込んでくる! ライガーがバッファローを押さえに回り、村浜が再度ブレンバスター、これも垂直落下、なおかつ村浜の全身のばねを利かせてのジャンピング式。どちらかといえば、破壊王の直下型DDTに似てたり。カウントは・・・・・・これをツバサが自力で返したときの城ホールは、突然の地震に見舞われたかのよう(笑)
 村浜自身も信じられないという表情。しかもゆっくりと自力で立ち上がるツバサ。全身の力で助けに入ろうとするバッファロー、それを必死の形相(マスクマンだけど)で食い止めるライガー。
 コーナーから走りこんで来た村浜の加賀百万石アッパーでようやくツバサが力尽き、ここに死闘の幕が下りました。王者防衛失敗。新王者誕生!
 つーか、会場の雰囲気に飲まれちゃって、バカみたいに
「すげーすげー」
 ってうわごとのようにつぶやいてた天笠。この雰囲気を伝えるには、あまりにも文才が足りなさ過ぎ。
 試合後、マイクも取らずにライガーに食って掛かったバッファロー。ライガーと自分の胸を指差して何か叫び。でも、マイクなんかなくたって、会場の誰もがなんて言ってるかわかりました。
「俺たちのハートは負けてましたか?」
 それにライガーがバッファローとツバサの胸を指差して応じる。
「負けてなかった」
 流石に悔しいインフィニティ、ツバサは一人では歩けない。それでもリングを降りる二人に、城ホールから万来の拍手が送られたことは言うまでもないです。
 引き上げる王者組の前には、先刻TAKAに完敗を喫したGammaが。微妙な緊張感が漂う中、ライガー・村浜とガッチリ握手。これは共闘と考えていいわけ? 信じちゃうよ? いいの?

「今日で大阪プロレスの第一章は終わりです」
(大阪プロレス選手権 デルフィンVSビッグボス・マグマ)

 つらいよな〜やっぱり。というのが率直な感想。ちょうど先日のNOAH武道館みたいなもの。セミがあまりに好勝負だったもので、客席も若干の疲れが見えます。まあ、テーマという部分では申し分ないし、今大会初の、純度100%のヒール登場なわけですから、別にだれた雰囲気はありませんでしたね。
 記念写真撮影中、マグマの奇襲で試合スタート。
「アフォか!!!!]
 と叫ぶや否や、ベルトを強奪して殴る殴る。残念ながら、大阪にはジョー樋口がいないのでやられるがままの社長。ガンマですら最後は声援が送られた今大会、教科書のような悪行三昧はやっぱり見ていて気持ちいいです(笑)。それに、「悪い」の前に「強い」が来ないと、恐さは感じられませんからね。昔のベイダーを髣髴とさせる雰囲気です。
 さて試合の方は、意外にデルフィン優勢。得意の人工衛星ヘッドシザースやドロップキックまで披露。もっと一方的な試合になるかと思ってたら……案の定。カウンターのショルダースルー一発で流れが変わります。起き上がった社長に、打点の高いドロップキックを一撃。あの身体(体重が公表されている中じゃ、大阪唯一のヘビー級だったりする)で飛べるなんて反則でしょう。
 たまらずエスケープした社長を場外で延々痛めつけ、ブーイングをものともせずにマスク剥ぎに移行する徹底した悪党ぶりは好感がもてますね(笑)。いまどきいませんよ、あんな典型的な悪者。マスクがちょっと破れて、茶色い長髪がのぞく社長。コーナーに振っておいてのベイダーアタックから、再びマスク破りに固執します。
 続くムーンサルトは社長の膝直撃。エスケープ後にブランチャ、社長もそろそろ空中戦を見せてきますが、フロントスープレックスで投げられた後、物凄いジャーマン食らって青色吐息。いまいちペースをつかめません。攻防は一進一退。息もつかせず技を掛け合い、それを切り返す展開。
 デルフィンはまあ解るんですが、それに完全についていくマグマも大した者です。技の合間に客からブーイングを引き出すのも忘れない。忙しいやっちゃなあ(感心)。
 マグマのラリアットをDDTで返し、必殺のスウィングDDTを狙うデルフィン、それを完全に受身を取ったマグマのラリアットが直撃、逆にフェバリットホールドを狙ったマグマ……ここから試合が一気に動き出します。
 ラストライドの体勢で抱え上げられた社長は、懸命にパンチで防御、しかしそのパンチの隙を縫ったマグマは構わずに叩きつけ、即座に二発目の体勢に入ります。これ以後、このラストライドが試合の重要なキーワードになります。
 二発目、角度をつける時の溜めを利用した社長がウラカン・ラナ。それを回転エビ固めで切って落とすマグマ。大会直前には、これで不覚を取ったこともありました、リング状の社長(誰の真似やろ)。
 そして三発目。マグマのラストライドへの拘りは並大抵ではないです。これをようやく回転DDTで切り返しに成功した社長ですが、反撃へ映る前に乱入してきたカルトの椅子攻撃! 予想しない攻撃に泡を食ったデルフィン、絶体絶命のピンチ。その機を逃さないマグマはマンドリラー、ラリアットと大噴火の畳み掛け。止めはもちろん、こだわりのラストライド。
 四発目のこれがパーフェクトに決まりますが、カウントは2。ならばと五発目。しかも落下地点はカルトが持ち込んだ椅子の上!
 これを食らっちゃ流石にやばいデルフィン、渾身のショルダースルーで切り返し、逆にマグマを椅子の上に落下させることに成功。長かった雌伏の時はこの時のためにあり……(笑)。ようやくデルフィンの反撃タイムとなりました。いや〜長かった。
 手始めに顔面ハイキック、そして元祖スウィングDDT、カウント2で返されると、大阪臨海アッパーの乱れ打ち。四発目でようやくダウンをとると、ここから見栄を切ってのカバージョ2002。
「さっさとギブアップして〜!!」
 ってムードの中、無理やり立ち上がって脱出するマグマ。一撃必殺の神通力は第1回天王山トーナメントで星川が破ってますからね〜。いくらなんでもこれで決まるわけないと思っていたが……。
 不用意にロープ際に近づいたデルフィンがカルトに捕獲されて、いよいよ試合はクライマックス。ここでやられちゃったら大阪じゃないよね(笑)。マグマのラリアットを一瞬の差で回避したデルフィン、ラリアットをまともに浴びてエプロンから転落するカルト、知らないうちに後ろに回ったデルフィンが超々高速ジャーマン、そしてそのままレッグロールクラッチへ固める……人、それをデルフィンスペシャル1号という(これがオコノミマンの必殺技と知っている人がどれだけいるだろうか?)。
 幕引きとしては100点満点に近いでしょう。丸め込みで勝利は確かにいまいちぱっとしませんし、どう見てもマグマの方が押していたわけですが、それだけにハッピーエンドに重みがあるわけで。
 試合後、デルフィンのベルト返上宣言。
「これからはスペル・デルフィンのやりたいプロレスを完成させる為、第一試合からやり直します」
 新エースに村浜を指名し、大阪プロレス第二章の幕開けを宣言して静かにデルフィンはリングをあとに……誰もいなくなったリングに爆発的な拍手が注がれて、大阪にとって初めての城ホールは終了しました。なんか感慨深い。
 終了時刻9:40。5:00試合開始から考えると、実に四時間半もかかったというマラソン興行でした(笑)。

で、ここからは総括。

 あ〜ちなみに、今回の観戦記は3000円の元はとるぞ〜バージョンの天笠が書いてるもんで、嘘・大袈裟・紛らわしいがあってもJAROに通報しないように。
 個人的には満足度90%オーバーでしたが、不満点も幾つか。吉本芸人の露出は仕方ないにしても、やっぱり興行時間が長すぎるかな。お得意さんは子供なわけだし。客を飽きさせない工夫は買いですが、カバーしきれなかったのは否めないわけで。
 演出面は下手なメジャーよりは全然良い! いちいち芸が細かいのは流石ですね。デルフィンの退場シーンとかは大会終了の余韻と相まってナイス。それが大会最後の大拍手につながったんだと思うし。
 試合面では、負けた選手の方が光った試合が多かったのが印象深い。マグマに至っては、負けた印象全然ないし。それもこれも、一試合ごとにテーマがかなり明確に定まっていたからだと思うんですよ。勝つ事の意義や背景を、何シリーズもかけて組み上げていった結果が今回の成功。一言で言えば丁寧ですかな。仮に、今回に勝負論が無かったとしたら、あれだけの盛り上がりは無かったんじゃないかと。なんせ、くいえべですら勝負論で語れたんですから。
 今後、大阪城ホールが定着するのかどうかはわからんですが、少なくとも可能性は痛いほど感じました。それがなにより嬉しい。地元だし(苦笑)。