ノア 2004年4月11日(日)
福知山市三段池公園総合体育館大会観戦記 |
投稿者:天笠さん
観衆:2500人
プロレスファンの聖地が後楽園ホール、ノアオタの聖地が有明、或いは武道館は異論のないところ。
それじゃもっと限定を深めて小橋ファンの聖地は? 滋賀県栗東体育館も渋くて良いんですが、やはり地元である福知山でしょう。地方ファンが都内のファンよりイニシアチブが取れる数少ない場所です(笑)。
で、行ってきました。遊びに来てた友人を京都駅まで送ったあと、市内から車で2時間半。流石に運転疲れもしたんですが。
延々と続く田園風景、新緑の山間に雪のように流れる桜吹雪。窓を開ければ農家の方が刈った草の香りが心地よく、京都らしくカーステはFM89.4にあわせ、軽く洋楽を口ずさみながらタバコに火をつけると。
あまりに気持ちいいので、危うくプロレスを見ることを忘れるところでした。さて、メインは番狂わせ、さしずめスポーツ紙なら
小橋、地元で赤っ恥 高山「武道館楽しみにしとけ」
とでも書かれるのでしょうかね。バッドエンドはバッドエンドだったんですけれども。
はっきり言って、今日ぐらいの興行完成度なら、客を逃がすことなんてないです。神戸の醜態を見たものとしては、
「なんだ、やれば出来るじゃないか」
です。久々にノアを褒めるので歯が浮くかも(笑)。
それじゃ恒例の客入り。正直、休憩前まではいささか寂しい入りでした。アリーナが7割、スタンドは4割いけば良いところ。そのおかげで、真正面にリングを望むベストポジションを確保できました。
客層は色々。大阪・京都と比べると子供の数が多いですね。小橋は地元の子供にとってもリアルヒーローのようです。垂れ幕は福知山高校柔道部の垂れ幕が見事な出来。特に、学生サイドのものは小橋の似顔絵が書いてあって、なんか微笑ましかったです。1:泉田・永厳 VS 百田・川畑
いつもの試合っちゃいつもの試合なんですけどねえ(笑)。泉田・川畑の両名が妙に動きが良かった気がする。客を掴むのなら若手の試合の方が良いんですが、今日に限れば二人とも十分及第点の内容でした。
ある程度客を和ませたあと、泉田の怒涛の畳みかけで川畑がフォール負け。喉輪落とし、ラリアット、STOと返しておいての不入りドムですから、説得力もまずまず。
しかし不入りドムって迫力あるねえ。上の方で試合する時も積極的に狙っていけばもっと楽しくなるんだけど。評価:3
2:W2+トレバー・ローデス VS 佐野・ヨネ・青柳開始早々、ヨネが力皇を挑発。それもそのはず、4.21大阪ではシングルを組まれてる。今シリーズ、中堅陣のシングルマッチを多く組んでる点は評価できます。
力皇とヨネがリング中央仁王立ちにどつきあうシーンが多かったですね。両陣営、締めと打撃を多用するバチバチファイトを選択。それぞれ目標をローデス・館長に定めるのは予想の範疇。
目を引いたのはヨネとローデス。特にローデスは序盤のアピール過剰に加え、打撃が猫パンチなので「ああ、ダメだこいつ……」と思ってたんですが、終盤の粘り具合は見事。何度か3カウント獲られてもおかしくない場面を必死にクリア。投げ技や飛び技はフォームも綺麗だし。装飾過多のアホキャラだと思ってたら、意外に根性系で売ることも出来るんだなあ。
中盤は捕まってたヨネですが、最後はラリアット、ローリングサンダーで追い込んでおいて得意の筋肉バスターでトレバーを沈めます。
バックドロップとパワーボムは見れなかったけど、これはこれで拾い物だと思わせてくれたのが良し。評価:4
3:丸藤・マルビン VS 橋・鈴木ルチャは馴染みの深い方だけど、ガタイのでかい選手がやるとまた見栄えが違って良い。ま、丸藤も鈴木もルチャというよりは日本のジュニアスタイル……というかノアジュニアスタイルとでも言うべきか。
で、その華やかな切り返しの妙に頑なに付き合わずに、無骨な打撃を挑んでいく橋がまた良い。不器用な選手ですが、やってできないことはないはずなんですが。
再三のダイビングヘッドバットで相手にローンバトルも強いるも、丸藤・マルビンのダブルマルのトリッキーな動きに徐々に切り崩されていく橋の図と。これだけ選手の多様化が進んでいるのなら、ノアジュニアが目玉として通用するのもわかる。コーナー逆さ釣り状態の橋に、ダブルで低空ドロップキックを二連発で放った時は驚いた。この二人、普段組んでないのに呼吸の合わせ方が上手い。ちょっと気になったのが鼓太郎。ロープ倒立からの背面アタック、619など(敢えてガンネタは使わない)動きの華麗さではひけをとらないが、フォールに結びつく攻撃がいささか少ないような。実力伯仲のノアジュニアの中でも殊更に格下感が目立つのはちょっと困る。
普段は見せないフィッシャーマンバスターまで使った橋ですが、最後は一度はとめた回転エビ固めを強引に丸め込まれて無念のフォール。大技で決めるのも良いけど、フィニッシュまでの過程に納得が出切ればこれでも十分満足。評価:4
4:井上 VS 池田いきなり雅央の奇襲からゴング。カウントぎりぎりまで粘る場外戦と徹底した左腕殺しで早くも5分。ノア戦士たるもの正統派であるべき、との考えだと褒められた行為じゃないが。でも僕は、普段のらりくらりと試合をこなしている井上が、なんとか普段と違う姿を見せようとしているように見えました。
池田もそれに受けて立ったため、この日一番の大荒れ試合になったんですが、それもまた良し。いつもと違う技を使ってるわけじゃないのに、この興奮は一体なんなんだろう。
走りこんだ池田の喉元に、今までちょっと記憶にないえぐい角度で突き刺さるラリアット。苛めモードの秋山を連想させる、執拗でいて多様な腕殺し。「本当に決めちまえ!」と思わせてくれたアルゼンチン。なにより、悪逆非道のヒールファイトを展開しつつも、表情から伺える必死さ。
勿論、池田の方が脂の乗りも良いし、今となっては格上の存在です。それでも、こんな形相の井上は初めて見ましたね。少なくとも、NOAHに移ってからでは最高です。
持ち技の全てをつぎ込んでも池田は倒れず。筋肉バスターはなんとか阻止、ならばと雪崩式でデスバレーボム。カウントは2。稲妻を挟んで大ちゃんボンバー、一発では倒れない。二発でも倒れない。三発目で玉砕。
今シリーズでは、ヨネとのシングルも組まれていますし、これはちょっと楽しみですよ。今日のテンションが持続できればの話ですけど(苦笑)。評価:5
まさか雅央に5をつける日が来るとは……
5:秋山・斉藤・金丸 VS スコーピオ・モデスト・モーガンここまで真面目に試合が進んでるからもしやと思ってたが、やっぱりこれがコミックマッチになっちゃったか(笑)。つーか、秋山は大会に笑いがないと我慢できないのかな?
いや、この試合は素直に楽しかったですよ。勿論ノアだから、必要以上に笑いを取ることは出来ないけれども、普段の試合の流れ、各選手の見せ場は十分に出しながらも、隙間を埋める部分では徹底的に馬鹿をやる。選手の力量が水準以上じゃないと出来ないこと。
ネタを文章で解説する野暮はよしておくにしても、結果的には20分強にも関わらず、だれた部分はなかった。一番目立ってたのはやっぱりモデストかな。前回はモーガンしか見られなかったのですが、もともと観客サービスは得意な選手ですし、調子も良かったらしい。
もっとも、スターネス勢もセコンドを引き込んでやりたい放題。セコンドでも、やっぱり橋君は弄られる運命だったのが笑った。
明るく、楽しく激しい時間帯を〆たのは斉藤。コーナーに走りこんでの膝蹴りからラリアット、そして問答無用のスイクルデスでモーガンを抑えて試合終了。これが地方のノアの味です。本来の、ね。評価:4
6:三沢・小川 VS 田上・菊池今日のワーストだな。この面子では予想以上の試合は期待できなかったんだけど。残念ながら、今日は周りが良すぎた。
しかし三沢・小川組はいつも同じ試合運びですねえ。変わらないのが良いところとも言えますけど。どんな相手でもいつも姿勢を崩さず、泰然自若と受けて立つ。そして同じ試合内容になり、客に眠気を覚えさせる……良し悪し。
対する田上・菊池組ももともと意表をつく動きをする選手ではない。ま、田上はいつもに比べればちょっと頑張ってたかな?
最後はタイガードライバーからバックドロップホールドで菊池が沈んで試合終了。例えば相手がW2とかならもっと燃えられたかも知れない。評価:2
7:小橋・本田・KENTA VS 高山・バイソン・スリンガーさて、今日のベストバウトです。当たり前か。
場所柄、面子を考えたら20分過ぎに小橋のラリアットがスリンガーに炸裂してピンフォール以外に、結末は考えられなかった。そしてそれで十分客席も沸いたし、小橋が最後にマイクアピールかなんかしたりして。そうはいかなかったのが今年のノア。
試合を振り返ると、殊勲者は二人。格下のスリンガー・KENTAの粘り。地元だからって小橋に華を持たせる気がないとでも言わんばかり。決してやられっぱなしではなく、二人ともかなり積極的に攻撃に参加してました。
バイソン・本田も十分存在感を出してたように思うし、大将二人も武道館を意識してかなり壮絶にやりあってた。6選手皆が、誰も遠慮することなく俺が俺がで行ってたの結果的に良かったのかも知れません。ちょっと小橋のラッシュと試合権の所在が噛みあわなかったのがあれかなあ。
付け加えるなら、高山とバイソンのコンビは予想外に素晴らしかった。連携も息が合ってたし、お互いがやりたいことを互いが理解しあってるようにも見えました。これは要チェック。
勿論会場は終始ドッカンドッカンですよ。つか、小橋の入場時から大炎上と言ってもよろしい。そりゃもう地元の有名人ですもの。この頃には、アリーナはほぼ満席に埋まってたし、なんとか満員つけられるぐらいには入ってたんでは?
スリンガーがピンチを凌いだあとは、高山組の猛攻がスタート。バーニングを全員戦闘不能にしたのち、本田をターゲットに大技のラッシュ。逆さづりにした小橋をスリンガーが押さえている間、バックドロップ+ダイビングネックブリーカー、そして去年からフィニッシュに多用しているランニングニーリフトを本田の顔面に見舞ってフォール。見事、小橋の眼前で本田を降して武道館へ向けた狼煙を上げました。試合後、詰め寄る小橋を三人で袋叩き、そして新日本では見せない本家本元のエベレストジャーマン。なんと、バーニング三人、誰一人として一人では歩けない状況に追い込んだ高山組。特に本田のダメージは大きく、客が帰りだしてもダウンしたまま。
高山の武道館勝利宣言も飛び出し、小橋勝利を信じてた福知山のファンには悪夢のような一日だったと(笑)。僕も、まさか小橋がここまでやれれるとは思ってもみなかった。勿論、ストーリーに関わるような大きなサプライズじゃないけど、この積み重ねでビッグマッチが盛り上がるんだよなあ。
試合自体は地方としては最高。ファンはがっかり。これで、今日会場に来てた何人かは武道館に遠征するんだろうか。評価:5
総評:……という大会だったんですが。勿論、小橋凱旋大会と銘打っていたので盛り上がらないわけはないんですけどね。
ひとつ文句をつけるのなら、会場が辺鄙すぎ(笑)。京都市内からでもちょっと気軽にはいけない。福知山周辺に大都市はないし。でも、それだからこそプレミア率が上がるのかなあ。
大会自体は良かったです。久しぶりにNOAHで大満足できました。移動時間を差し引いても、行った価値は十分にありました。実際、あまりに熱くなりすぎて、終わったあとはもうへとへとでした。これを府立で出来ていれば(笑)。地方のリピーターを逃さないことを第一条件に考えれば、地道にやるしかないんですよね、結局は。MVPはなしということで。試合毎にテーマがしっかりしてて、純粋に試合に没頭することが出来ました。小橋・高山ラインがやっぱり筆頭かな。敢えてあげるなら井上雅央。それだけ出来るなら普段からやれよ!!(笑)。
ワーストは……三沢・小川かなあ。ありゃ完成されてるんじゃなくて停滞してるだけのような。毎回、これぐらい熱くなれるんだったら多少無理をしても見に行きます。内容の維持による実績作り。関西でフルハウスになるのも夢じゃないよ。
そして、満足のうちに帰ろうと思ったら道が分からない! 田舎だし! 道路造りまくりでカーナビも役立たず! 結局俺って最後はネタで終わるのよな……
文責:天笠