行って参りました。ノア大阪大会の観戦記を寄稿しようと思います。
今回も書き上がり次第、逐次アップロードしていきます。何分長くなり勝ちなので、アップロードが遅れるかもしれませんが、その辺りは何卒御諒承を。
因みに文中に「彼」という一人称が出てきますが、それが小生です。それでは………。
彼はTV画面を見つめていた。先のGHCタッグ戦、試合終了後に秋山が志賀に言い放った一言。
「志賀! オラ立って帰れ! 立って帰れ!」
その言葉の真意を改めて確かめようと、彼はそそくさと仕事を切り上げ、大阪府立体育会館に足を運んだ。観戦しようと想いつつも、その機会を逸しし続けていたプロレスリング・ノア観戦。漸く、その機会が訪れたのである。
前売り券を購入していなかったので、今回当日券を購入。4000円也。普段なら此処に、ノアファンの顔馴染みが顔を覗かせている筈なのだが、何分その男も多忙の身。観に行けずにさぞ悔しがっているのだろうな、と、彼は要らぬ心配をしていた。
午後4時過ぎ、三沢光晴がタクシーで会場に現れ、一人屋内へ。追っかけが何人か後を追っていた様子である。会場近辺は五十日ということもあり、何処か人の歩みも忙しない様相。そうこうしているうちに当日券売り場には10数人の観客が列を成していた。
開場するまでの間、向かいにある定食屋で腹拵え。暫くして雑誌記者と思しき面々が総勢4人、店内で会話を始めたが、彼にそれを聞くだけの能力は持たなかった。
午後5時開場。世代別に見て、矢張り若い人達が多く観戦に訪れている様子。中には女性ばかりの集団で来ている者も。後は、会社帰りのサラリーマン連れの姿が目に付く。以前と較べてみて流石に関西でもノアの客層は拡がりつつある様子。以前彼が聴いていたラジオ番組で、三沢光晴が「一度観れば必ず、嵌りますから!」と話していたが、その言葉は矢張り真実であろう。先頃の大阪大会の成功が、今回リピーターを増やす切っ掛けになったのは、紛れもない話。今回成功すれば、更なるリピーターの増大に期待を持ち得るに違いないだろうから。
試合開始までの間、売店を一瞥。対戦カードを把握しておくためにも、パンフレットの購入は不可欠。1500円也。個人的に橋や森嶋の欠場は痛い。この他、スリンガーも負傷欠場の憂き目に遭っている。
パンフを見つめながら、サラリーマンとその子供の姿を発見。次期開催の神戸大会のポスターに見入る。その姿を凝視する彼。「良い光景だな」という実感に浸る。売店に齋藤彰俊の姿があり、記念品購入でサインが貰えるというアナウンスがあったが、何分彼も金欠の身。じっと怺(こら)える以外になかった。
試合開始も間近。Dream Onの響きとともに、場内暗転。いざ、観戦記へ………。
(第1試合)ラッシャー木村&百田光雄
V.S. 永源遙&川畑輝鎮 @ 20分1本勝負
所謂"ファミ悪"マッチ。この時点では未だ客入りは6〜7割方か。それでもノアの1試合目にこのカードは最早定番。それぞれのテーマ曲でメンバーが入場。入場時に観客の声援に応えるラッシャーの姿が印象的。永源遙のピンク色のタイツ。肉眼で観るとそれが尚更眩しく映るから不思議だ。そして投げ入れられるピンク色の紙テープも。
試合は百田と川畑の先発でスタート。だが程なく永源の登場。すると早速、百田の攻撃に永源堪らず"唾"! 咄嗟であったのか、これを巧く防げた輩が居たのか、彼は知る由もなかった。因みにこの試合で、永源は3度"唾吐き"に成功。最前列に陣取った観客はそれを期待していたのか、傘でそれをしっかりと受け止める。
川畑が百田にジャイアントスイングを決めようとするも、場内から「逆だ!」の野次。永源のジャイアントスイングを観たいという観客のアピールなのか。すると永源、早速百田にジャイアントスイング。観客のコールに乗って廻す廻す回転木馬。回転数にして23回転半。それだけ廻せば流石にふらふら。ラッシャーの反撃の目に。
途中永源がインディアンデスロックに移行するも決めず、ラッシャーのラリアートでそれが決まるという愉しさ。何処かのんびりした中にも、基本には忠実ということをというアピールがそこに込められているというのは、彼の誇張癖か。
最後は百田が川畑を逆さ押さえ込みに切って落とす。だが、ファミ悪はこれだけでは終わらない。寧ろ、ここからがメインと言っても良い筈。
何と永源からラッシャーに向けてマイクアピールをしろというアピール。そしてそれに呼応したラッシャーの言葉。その遣り取りとは………。
永源「木村! 何か喋りなさい!」
するとラッシャーはこう返す。
木村「………、みなさん、こんばんわ」
これには場内の浪速のファンが大喝采! 嘗てのあの新日本乱入時のコメントが蘇った刹那。その後のラッシャーのコメント。
木村「みなさん、日一日と寒くなってきましたけど、風邪を引かないように気を付けて下さい」
その後のコメントで、大阪の観衆に向けての感謝の言葉。そして最後に、
木村「………メリークリスマス」
………おいおい、未だ早いんじゃないのかと一瞬考えたが、これでこそ現在のラッシャー。このコメントで早速掴みは果たしたに違いない。そこにファミ悪マッチの存在意義が込められている。
(第2試合)力皇猛 V.S. 青柳政司
@ 20分1本勝負
素直に愉しめた試合。体格差の不利をものともせず、青柳館長が蹴りをびしびしと決めていく。場内コールは青柳館長の方が大勢。力皇は関西出身(奈良県桜井市)でありながら、コールは圧倒的に少ない有様。彼は聊か気の毒に想っていただろう。
体格差。矢張りこのカード館長にとっては不利だったのかもしれない。それでも場内の、
「力皇、遣り過ぎや〜っ!」
「館長、負けんなぁ〜〜〜っ!!」
という声援に応え、館長はびしびしと蹴りを決めていく。力皇が苦しい表情を浮かべているのを観客が観るに付け、館長コールは鰻登り! 良い感じの試合運びだ。
最後は力皇が合掌捻りからショートレンジのラリアートでフィニッシュ。だが、館長の奮闘振りは十分に評価され得るべきもの。試合後、力皇が館長の右手を掲げて健闘を讃えていたのが印象的であった。
(第3試合)池田大輔 V.S. 井上雅央
@ 20分1本勝負
この辺りで観客が大方満員になる。今日はノアで不利と言われ続けている関西での興行であるにも関わらず、客入りはかなりのもの。以前三沢がラジオ番組で言っていた台詞が、真実であることを実証付けているのであろうか。
"エアポケット"と屡々揶揄される第3試合。観客に依ればこの試合に対して厳しい評価を下すのかもしれない。お互い中堅レスラーとして埋没してしまっている印象の強いレスラー故、何か自己アピールに繋がる戦いが出来るのかが、この試合のポイントだと彼は睨んでいた。そして、彼の懸念は、"良い方向に"裏切られることとなる。
試合開始早々、池田がいきなり井上の延髄にハイキック! すると井上も負けずにエルボー! 両者は激しい打撃戦に。観客も大いにヒートアップ。
暫くしてやや落ち着いた、悪く言えば中弛みの展開。この辺がこの試合の価値を観客にどう植え付けるのかだが、それは個人の感覚に委ねられるもの。彼にそこまでの詮索をする義務なんて無かった。
10分過ぎ、井上がコブラツイストを決める。だが池田は手に噛み付いてこれを脱出。それでも井上はジャイアントバックブリーカーを池田に決めていく。池田が打撃で行くなら、井上はじっくりと。そしてお互いの負けん気。これが巧く功を奏せば好勝負、悪く作用すれば凡戦となるのだが、今回これは彼個人、見事に融合した試合と思えるものであった。
15分過ぎ、井上が
「担ぐぞ〜〜!!」
しかしこれを撥ね除けた池田。ラリアートを決めるもカウントは入らず。そうこうしているうちに残り時間3分の場内アナウンス! お互い勝利を目指して遮二無二相手に向かっていく。惜しむらくはこの辺りで稲妻レッグラリアートを池田には放って貰いたかったところだが。
残り2分。池田がキン肉バスター! これでもう井上も駄目だろうと思ったが、カウント2で返す! 最後は決め手を欠いてしまい結局引き分けに終わったが、好勝負を見せた2人には、惜しみない拍手が送られていた。
お互い健闘を讃え合い、仲良く握手……、と思いきや、池田は井上に向かって攻撃! これに逆上した井上も負けじと反撃! お互い取っ組み合いの中、観客からは何と大・延長コールが!
「延長! 延長! 延長!……」
しかし延長戦は実現せず、抗争は次回に持ち越しといったところか。だが、彼は屹度、個人的には2人の戦いをもう一度観ておきたかったに違いないだろう。前回観た全日本の第3試合とは雲泥の差のこの日の第3試合。2人の抗争がどれだけ続くのか。自前で拵えた抗争の持続性という、これは現在の池田、ひいてはノアの興行に於いての大きな課題でもある。良いムードで休憩時間に。
休憩時間に長蛇の列の出来たトイレに駆け込む。そして売店を一瞥すると、そこには力皇の姿が。実際に販売に加わっていたのかは定かではないが、レスラーとファンとの距離の縮まった刹那を感じ取るには十分であった。カップのコーヒーを1杯呷り、応援に戻る。だが、最初に座っていた席は聊か観るには辛い位置取り。次の試合以降、彼は違う角度から立ち見して観戦することに。そしてそれが功を奏することとなる。
(第4試合)田上明&菊地毅 V.S. 本田多聞&杉浦貴 @ 30分1本勝負
本来は菊地と杉浦のシングルマッチが組まれる予定だった。だが、今シリーズ、森嶋が眼病、橋とスリンガーが共に負傷欠場の憂き目に遭った為、結果としてこの2人の絡みはタッグマッチで行われることとなったのである。
ゴング前にいきなり奇襲攻撃を仕掛ける多聞と杉浦。しかし今は乗っている田上。これを撥ね除ける。菊地も杉浦も、カード変更にも構わず、良い動きを見せている。
多聞と杉浦のタッグは、菊地の腕をひたすら狙っていく。しかしこれくらいでへこたれる菊地毅ではない。返す刀でしなやかなドロップキックを放つ。
田上は田上で、多聞と杉浦の両者に連続して喉輪攻撃。特に2発目の杉浦への喉輪は、倒れている多聞をも同時攻撃する一挙両得の攻撃。だが、この試合、彼自身、もう一つ田上の印象が強く残っていないようであった。また多聞もそれほど目立った印象を彼に与えてはいなかった。恐らく本来は菊地と杉浦とが正面から渡り合う、シングルが観たかったのであろう。勿体ない感じである。
試合も終盤にさしかかった15分過ぎ、お互い乱戦模様。そんな中杉浦が一気に畳みかけていくが、それを撥ね除けた菊地。最後は火の玉ボムを杉浦にばっちり決めて3カウント。
試合内容自体は可もなく不可もなくと言った印象。それだけに深く残りにくいものになってしまったのは、カード変更の悪弊か。タッグではなくシングルでこそ良い勝負が望めた筈と、彼自身は考えていたのであろうか。
(第5試合)小川良成&佐野巧真&鈴木鼓太郎
V.S. バイソン・スミス&マイケル・モデスト&ドノヴァン・モーガン @ 30分1本勝負
さて、観客にも受けの良い外人組登場。人気が日を追う毎に上昇しているバイソン・スミス。エクセレントインクは言うまでもなく、タッグチームとして完熟したコンビ。そして観客を独自の世界に引き込む不思議な魅力を備えている。
他方、日本陣営は、小川&佐野のお馴染みのコンビに鼓太郎を交えた面子で臨む。何かと小川と佐野のコンビは外れが多いと言われ勝ちだが、この日に関してはそういう印象は彼は持っていなかった様子である。
モデストと鼓太郎が先発。鼓太郎にレスリングの基礎を叩き込むが如く、モデストはじっくりねちっこいレスリングを展開していく。改めて鼓太郎のブリッジを観て、身体能力の高さに唸る。この試合から、彼の側で池田大輔が記者と談笑しながら観戦。走り廻っていた子供の服にサインをする池田。何とも微笑ましい光景である。
実に鼓太郎の動きがしなやか。エクセレントインクの両者に蟹鋏。だが、バイソンにはなかなか決まらない。そんな中、モデストが小川に向けて放った唾。小川が反応。この辺りに地味ながらもインサイドワークの重要性が感じ取れるというもの。バイソンも負けじと小川を挑発していく。
試合開始から暫く鼓太郎のローンバトルの様相が続いていたが、モーガンに低いドロップキックを放って佐野にスイッチ。それにしても外人組は観客の心を見事に掴んでいる。バイソン・スミスしかり。エクセレントインクしかり。バイソンのあのリング上での佇まいは、観客を独自の世界に引き込む魅力を存分に備えている。だからこそ、チョップ一つでも、あれだけ観衆が沸くのである。
小川と佐野の動きが面白い。モーガンを2人でレッグスプレッドで捉えた後、TVカメラに向かって佐野が、「この映像を撮れ!」と言わんばかりのアピール。かなり観客からも大きな笑いが起こる。
佐野はモーガンに吊り天井。その他にもソバットやトペなど、実に動きは滑らかなのにも関わらず、何故、現在の位置に止まっているのか。これまでのレスラー人生から一転しての安定も良いだろうが、多くのファンはもう一度の飛躍を望んでいる。そしてその多くは「ジュニアとしての佐野をもう一度観たい」という、心からの渇望である。
バイソンの動きは格別。小川と佐野を同時に抱えて後方へ投げ飛ばしたのには、彼自身大きな驚愕であった。それに沸く観客。着実にバイソン人気が根付きつつある印象を窺わせる。
鼓太郎の動きの良さは目に付いたが、そこは矢張りタッグマッチ。試合終盤の乱戦から、最後はモデストがきっちりとリアリティチェックを決め、カウント3。敗れはしたものの、鼓太郎には惜しみない拍手。ドロップキックの切れ味といい、ノアのジュニアはその陣容を整えつつある。
(第6試合)三沢光晴&泉田純 V.S.
ベイダー&スコーピオ @ 45分1本勝負
さて、セミファイナル。三沢とベイダーの絡みがメインだが、泉田が何処まで意地を見せられるのか。彼は兼ねてから泉田のことを気に掛けていた。どうすれば良くなるのか、そういうことを中堅に関して色々思索するのを、彼自身楽しみにしているのである。そういうファンの期待に、添えられるのか。
スコーピオ入場。ダンスに浪速の観客も呼応。子供を肩車した親御さんが懸命に走り廻る光景が、妙に彼にとって微笑ましく映っていた。その後のベイダーの入場。流石に千両役者。観客のムーブは高まる。
泉田が入場の後、いよいよ三沢登場! 高まる声援の中リング印する三沢。「あぁ、ノアの興行なんだな」と実感する刹那。地方でのファイトに精彩を欠いているという批判もあるが、それでも三沢の存在感たるや絶大。スパルタンXのテーマに乗っての三沢コールは、開場全体が一体となった感覚を憶えるものである。
試合は外人組が奇襲攻撃。そこから三沢とスコーピオの手四つの攻防に。エプロンからベイダーが、
「頑張ッテ、スコーピオ!」
これには観客も大きな喝采が巻き起こった。じっくりねちっこい三沢とスコーピオの手四つの攻防。そこから場外に落ちたスコーピオ目がけて、三沢のトペ炸裂!
するとベイダー、その三沢目がけて急襲! 互いに入場口まで雪崩れ込み、揉み合う。矢張りこの2人、ガチンコで本格的にタイトルを争ってこその関係である。
泉田の戦い振り。戦闘能力そのものは決して低くない筈。相撲仕込みのかいな力はあるし、飛び技等の軽快な動きも出来る。それなのに何故振るわないのか。ベイダーの攻撃に防戦一方の泉田。切歯扼腕という言葉が、彼の頭を過(よ)ぎった。
泉田の腕を極めるスコーピオ。極めながらコーナーの三沢に向け、
"Come on!"
これを聞いた三沢、即座にエルボー一閃! 堪らずスコーピオはベイダーにスイッチ。
三沢とベイダーの攻防は激しい。三沢がベイダーに投げ放しジャーマンを決めた瞬間は、観客もどよめく。スコーピオも泉田に向けジャーマンを放つ。
それにしても泉田が振るわない。一応反撃は少しは見せるものの、ベイダーの激しい攻撃に為す術なし。最後はベイダーがチョークスラムで3カウント。
またしても泉田は結果を残せなかった。本人自身は非常に悩んでいるのではあるんだろう。だが、結果が付いてこないことにはどうにもならない。目の肥えたファンをして、「あいつは、ええファイトをしおる」と言わしめるだけのものを見せないことには、幾ら温かいと言われるノアのファンでさえもそっぽを向くことになりかねない。
リング上で大の字になる泉田。それを気遣う三沢とスコーピオ。だが、このままの状態でいいのか? こういうシチュエーションで納得しているのか?
泉田よ、お前にどれだけのファンが苛立っているのか解っているのか?
それにきっちりとした答えを出すのは、泉田本人の責務である。彼も決して納得していない。彼をして「この日の中では、今ひとつの試合内容だった」という評価を何としても覆さなければならない。今一度、抗う勇気が欲しい。
(第7試合)秋山準&齋藤彰俊&金丸義信
V.S. 小橋建太&志賀賢太郎&KENTA @ 60分1本勝負
いよいよメインである、バーニングとスターネスの戦い。想い出される秋山から志賀へ向けられたメッセージ。
「志賀ーっ! オラ立て! 立って帰れ! 立って帰れーっ!!」
この言葉。志賀にとってどれだけ重要な意味を持っているのか。その答えを確かめるべく、彼はこの日観戦に訪れたのである。小橋のファイトも観たい。KENTAの活きの良いファイトも観たい。だが、彼にとって今重要なのは志賀の心意気である。
金丸がGHCジュニアのベルトを誇示しながら入場すると、それにKENTAが呼応。KENTAも着実に上位を窺える所まで成長しつつある。睨み合う金丸とKENTA。
さぁ試合開始! 先発はその金丸とKENTA。序盤から激しくやり合う両者。KENTAの蹴りと金丸のエルボーとが激しく交錯し合う、熱い熱い攻防。場外に雪崩れ込むと、志賀と彰俊、小橋と秋山とが互いに鬩ぎ合う。
滞空時間の長いブレーンバスターを秋山相手に決める小橋。ドクターが言うように、膝の完調を満員の観衆に十分にアピールする良い機会であった。戦況を見つめる彼もまた、その姿を観て安堵した。
秋山は小橋にサーフボード。それを持ち前のかいな力で返そうとする小橋。力の入る攻防。返そうとして一度は秋山に再びサーフボードを決められるも、再度返す小橋!逆にサーフボード!
そして、待ってました志賀と秋山との攻防!
志賀と秋山。2人に求められているもの。それはまさしく
「気迫」
の2文字。それを体現するべく、彼等は張り合う、張り合う!
お互いにプロレス技を仕掛ける訳でもない。兎に角リング上では、志賀と秋山とが張り合う! 張り合う! 秋山に何発喰らっても意地でも倒れない志賀!
そして懸命に秋山に張り返す志賀! 観客はこれを観て大興奮! だが、志賀に求められているものは、それよりも更に1段階高いものである。単に張り合いで満足させるだけなら誰でも出来る。張って秋山を倒すことこそ、志賀の目指すべきもの。
兎に角金丸とKENTAの攻防は熱い。場外でも互いの意地の張り合い。秋山は金丸に、
「もっと行け、オラ!」
と痛烈な檄。そんな秋山目掛け、志賀が懸命に突っかける! 兎に角志賀の視界には、秋山準ただ一人しか見えていない様子である。だが、それでも良い。それでこそ、志賀の真面目さが引き立つのだから。
再びリング上では、小橋と秋山の佇まい。小橋が逆水平! そして青春三倍速! それを凌いだ秋山が小橋にエクスプロイダー!
だがこれをものともせず小橋は秋山にハーフネルソン・スープレクス! 激しい。激しいからこその2人の攻防。
志賀と金丸の攻防。これ自体は少なかったが、志賀が金丸に対して卍固めを決めた瞬間は観衆も沸いた。志賀の動きの良さと気迫は、訴求力を彼に向けて存分に放っている。だが、これも恐らく高山辺りにしてみれば、「無駄な動き」と喝破されるのであろうか。彼自身に、それを推し量ることは出来ない。
再び、金丸とKENTAの攻防。この攻防は恐らくこの試合で1番多かったのではなかったろうか。 KENTAの動きの良さは非常に目に付いており、スワンダイブ式ドロップキックは観衆の目を存分に惹き付けている。金丸とKENTAとがやり合うにつれ、その他の攻防も次第に目まぐるしい様相を呈してきた。
此処までだと彰俊が駄目なように伝わってしまいそうだが、決してそうではない。彰俊も動きは実に素晴らしく、志賀に向けての攻めも厳しいものがあったが、如何せん他の攻防の激しさに押されて損をした面は否めなかった。逆に言えば、それだけ志賀や金丸、KENTAの良さが際立っていたということの裏返しにもなる。
終盤場外で激しくバーニング勢とスターネス勢とがやり合う中、金丸がKENTAにディープ・インパクト炸裂! これが勝負の決め手になったのだろうか。最後は彰俊がKENTAを押さえ、スターネスに軍配。だが、KENTAの奮闘振りは観衆を大いに沸かせた。
さて、この日の興行は彼自身、個人的に面白いと感じていた様子である。だが同時に、ノアの抱えている現状の問題についても、改めて想い知らされる、そんな1日であった。果たしてこの日の興行でリピーターは増えるのであろうか?
そういう雑感を胸に帰路に就く彼。夜の街は非常に寒く、冬の到来を彼にまざまざと知らしめていた。
振り返って秋山から志賀へのあのメッセージ。キロの途中、もう一度その言葉の意味を彼は探ってみる。
本当に志賀を思う気持が込められていなければ、ああいう台詞は出てこないし、それに志賀を怒ったりしない。
結局は在り来たりの考え方になってしまったが、これで良いんだと、自分なりに咀嚼する彼。だが、そう考えるこそ、志賀に対して更なる高みを望もうとしている自分の姿に気付いた彼。
来年の今頃、志賀は果たしてどういう姿を彼の前に見せるのであろうか………。感慨に浸りながら、彼は買ったばかりの缶コーヒーを一気に飲み干した。(観戦記終わり)
ちょっと趣向を変えて書いてみましたけど、人と違った観戦記を書こうとするとなかなか難しいものだなと、実感してしまいました(笑)。今回メモ記載を控えめにした所為か、聊か途中の試合運びに関して表記が到らない面もあるかと思いますが、その辺はどうかお許し下さいませm(_
_)m{深々。
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